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吹奏楽燦選/フェスティーヴォ!

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 年末年始の欧州旅行期間中、i-Podでずっと聴きまくっていたのが東京佼成ウインドオーケストラによる「吹奏楽燦選/フェスティーヴォ!」というタイトルのアルバムだ。音楽之友社の「レコード芸術」が選出した2013年レコード・アカデミー賞の特別部門に輝いている。
 
 ネリベル作曲の交響的断章、二つの交響的断章、フェスティーヴォ・・・。作曲家あるいはこれらの曲名を聞いて「ん!? おっ!?」とピンとくるのはおそらく吹奏楽愛好家だけだろう。吹奏楽経験のないクラシックファンはネリベルという作曲家自体まったく知らないのではなかろうか。
 
 かつてブラバン小僧であった私にとって、ネリベルは、‘偉大’と形容すべき作曲家である。個人的には、吹奏楽の神様と崇められたアルフレッド・リードよりも格上の存在だ。
 とにかく好きだった。大好きだった。上の3曲、それに加えてアンティフォナーレ。みんな好きで、高校生の時に貪るように聴いていた。だから、これらが一堂に収められたCDの存在を見つけた瞬間、飛びつくように購入してしまったというわけだ。
 
 特に「二つの交響的断章」は、高校3年生の時に実際に演奏した経験があって、なお一層思い出深い。私の青春とも言える曲なのだ。懐かしい!受験勉強そっちのけで練習に明け暮れた毎日。「ああーあああー・・こうこう~三年生~♪」
 
 高3の時、二つの交響的断章を演奏出来たのは、何を隠そう私のゴリ押しの成果である。大好きな曲をなんとしても演奏したい。定期演奏会で演奏するための部内選曲委員会に上程し、当時私は吹奏楽部の副部長だったのだが、その権力を最大に利用して、強引に力づくで他の部員をねじ伏せ、決定させた。
当たり前だろ。オレは副部長だぞ?文句あるヤツはいるか?あるヤツは放課後に体育館裏に来い。一人でだぞ。わっはっは。
 
 ネリベルの魅力は、何と言っても音楽のカッコよさにある。響きが斬新であり、打楽器が活躍するので華やかで炸裂度が高い。さらには独特のエキゾチック感があるのだが、これはきっとネリベルの出身であるチェコのスラブ音楽が影響しているのかもしれない。
 
 さて、そんなネリベルの作品であるが、熱を上げて夢中になっていたのはもう30年も前のことである。はるか昔だ。高校卒業後は吹奏楽の世界から足を洗い、音楽鑑賞の趣味は以後もずっと続いているとはいえ、果たしてこれらの曲が現在の自分の感性に響くかどうか、心配だった。クラシック音楽の嗜好も、年月とともに多少変化しているからだ。
 で、聴いてみた。感動した。相変わらずカッコ良かった。ネリベルは依然として偉大だった。これは嬉しかった。
 
 東京佼成ウインドオーケストラの演奏は、さすがにプロだけあって上手い。だが、手堅くて、燃焼度はちょっと期待を下回る。私が知っているネリベルは、もっとパンチが効いていた。もちろん不満というほどのものではないのだが。
 きっと高校生の時、弾けるような若さと勢いで演奏したその時のイメージが凝り固まってしまっているせいだろう。仕方がない。
 
 
 最後に高校当時のエピソードを一つ。
 中学生の時に一緒に吹奏楽をやっていた仲間で、それぞれ別の高校に進学した後もお互いに演奏を続け、毎年開催される吹奏楽コンクールでは常にライバルとして争っていた友人Hくんがいた。
 そのHくんが、高校3年のコンクール前に私の家に遊びに来た。彼は一本の録音テープを持参していた。
「今度のコンクールでさあ、我が校はネリベルの交響的断章をやることになったんだよねー。」
 
 しまった、やられたと思った。
 私の高校は定期演奏会では「二つの交響的断章」を採り上げたものの、コンクールでは別の曲で臨むことになっていた。顧問の先生の決定なので従うしかなかったが、私自身は本当はネリベルで勝負したかったのだ。そしたらなんと、親友が在籍するライバル校がそのネリベルで打って出るとは! これはショックだった。
 
 Hくんが続ける。
「うちの部の演奏テープを持ってきたんだけどさあ、ちょっと聴いてみてくれない? キミの感想を聞かせてくれよ。」
 
録音テープを聴いた。それは衝撃的とも言えるくらいの演奏だった。上手い!上手すぎる!
私はうろたえた。言葉が出なかった。
「こっっこっ・・こ・れは・・・。」
ライバル校はこんなにも実力を上げていたのか!? それに比べて俺らの演奏は・・・。
完全なる敗北だ。私は打ちひしがれた。だが、戦う前から親友に敗北を認めるのはプライドが許さなかった。
「ううーん・・・なかなかやるねえ。結構いいじゃん?まあまあだと思うよ、うん・・」
 
 親友がニヤッと笑った。
「これ、本当にうちらの演奏だと思う?? なわけないでしょ。実はねえ、コレ昨年の全国コンクールで金賞をとった○○高校の演奏ね。我々の模範演奏ね。くっくっく。なんだよその『まあまあ』っつうのはよ(笑)。」
 
 Hくんの首を死なない程度に思い切り締めてやったのは言うまでもない。