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2013/3/7 ロンドン響

2013年3月7日   ロンドン交響楽団   サントリーホール
指揮  ベルナルド・ハイティンク
マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)
ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第2番
ブルックナー  交響曲第9番


 巨匠ハイティンクブルックナーが最大の聞き物であり、目玉の公演であったと思う。きっと、多くのブルックナーファンが会場に集結したに違いない。私も、当初の期待はそうだった。

 だが、前半のピリスのコンチェルトには本当に感銘を受けた。思わずジーンときて目頭が熱くなった。

 この人のピアノのタッチは信じられないほど絶品である。シルクのように美しい音色と細部の繊細な表情付け、これこそがピリスの真骨頂と言えるだろう。
 特に第二楽章のアダージョ!極めつけだ。静かで清楚な佇まいにうっとりとする。まぶたが自然に閉じられ、やがて夢の世界にいざなう。天国が本当にあるかどうかは知らないが、もしあるとするならば、それはピリスが弾くこのアダージョの演奏に包まれた場所だろう。永遠にこの心地よさに浸っていたいと思った。


 休憩時間となり、夢から目覚め、気持ちを入れ替えて今度はメインのブルックナーと対峙した。

 どの作曲家であっても、奇を衒わず、作品に誠実に向き合い、素材そのものの良さを最大限に引き立たせるアプローチ。これがハイティンクの音楽であり、パーソナリティだ。
 そんなハイティンクにもっとも相応しい音楽がブルックナーではないかと私は思う。

 世界ナンバーワンの指揮者にハイティンクの名を挙げる人はそう多くはいないだろう。カリスマ指揮者として常にスポットライトを浴びて来たとは言い難い。だが、長年にわたり、地道に、愚直なまでにこの流儀にこだわり続けた結果として、今や誰もが認める巨匠となった。

 そのような生き様が、どこかブルックナーと相通じるものがあるような気がしてならないと思うのは私だけだろうか。

 この日の演奏も、ハイティンクらしい、決して派手さはないが、真摯で実直なブルックナーだった。
 

 それにしても、ロンドン交響楽団のフレキシビリティの見事さよ。

  アバド、ティルソン・トーマス、バーンスタインブーレーズ、コリン・デーヴィス、ハーディング、ゲルギエフ・・・。これまで様々な指揮者と共に日本で演奏してきたが、どの指揮者の要求に対してもハイレベルに応え、決して演奏の質が落ちないのは驚異的だ。ベルリン・フィルにしてもウィーン・フィルにしても、公演によって、あるいは指揮者によって、出来不出来の差が生じるもの。そういう意味において、世界でも屈指の能力の高さとIQの高さを持つオーケストラだと思う。