指揮 ピエタリ・インキネン
指揮者の意図が演奏に十分に反映された、まさにインキネンのブル8であった。
情感の露出は控えめにし、荘重なテンポで格調高さを演出。それでいて決して厳格ではなく、どこか素朴さが漂う。インキネンがそういう音楽を作っていた。
日本フィルは、良く言えば指揮者に忠実、悪く言えば指揮者の言いなりだった。
ラザレフは常にオーケストラの持ち味を引き出そうとするやり方だったので、指揮者とオーケストラとの丁々発止が非常に楽しく、その効果が日本フィルの演奏能力に覚醒を及ぼしていた。だが、この日の演奏を聴く限り、日本フィルの奏者たちは、授業で教師の話を黙ってノートに書き留める高校生のようだった。
ま、あくまでもこの日の演奏、私にはそのように聞こえたということで。
断っておくが、出来上がった音楽が悪いとは一言も言っていない。上に書いたとおり、インキネンが作ったブルックナーは、特徴があって面白かった。
それに、この曲そのものが傑作中の傑作なので、どんな演奏でも感動し、満足するのだ。
ん? 褒め言葉になってないか(笑)。