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2012/3/23 都響

2012年3月23日   東京都交響楽団定期演奏会   東京文化会館
宮田大(チェロ)
チャイコフスキー  ロココ風の主題による変奏曲
 
 
 一曲目のチャイコ。若手のホープ宮田大がソロを務めた。小澤征爾の体調問題で揺れた水戸室内管弦楽団東京公演で、天皇臨席の御前で小澤の伴奏によりハイドンのコンチェルトを弾き、なおかつその時のドキュメンタリーがBS放送されて、一躍話題の人となった。私もその放送を見たが、素顔は普通の若者、兄ちゃんという感じで好感を持った。
 
 この日の演奏でもしっかりとした技術を披露し、才能の片鱗を見せたが、一方で、大物の予感というか、スケールの大きさはあまり感じなかった。
 でも、それは奏者の問題ではなく、きっと曲そのものの問題だったと思う。
 何を隠そう、私はこの曲があまり好きではない。ソフトで爽やかだが、内向的で、チャイコの他の作品に感じられるようなパッションに乏しいと感じる。なので、別の曲の演奏を聞けば‘大ちゃん’の違った魅力を見いだせたかもしれない。
 
 メインのタコ4。もちろん名指揮者インバルの登場とはいえ、平日の東京文化会館でこのプログラムだというのに、客入りがすこぶる良かった。
「タコ4でこんなに入るのか!?」
 にわかに信じられなかったが、この隠れた名曲が実は根強い支持を得ているのだとしたら、タコマニアの私としてはこんなに嬉しいことはない。
 
 嬉しかったのはそれだけではなかった。都響の演奏だ。
 数あるショスタコ交響曲の中でも、この曲は特に難しいと個人的に思う。
 まず、演奏が難しい。そして、難しい演奏をこなしたとしても、聞いている人が曲を理解し共感を得るに至るのは、これがまた更に難しい。
 
 だが、この日の都響の演奏は技術的な問題を軽々とクリアし、単に「演奏した」に留まらず、作曲家ショスタコーヴィチの思惑や意図にまで迫っていた。だからこの日の聴衆は、この難曲を「とっつきにくい」「理解不能」とは感じなかったと思う。それだけでもすごい。
「日本のオーケストラのレベルもついにここまで来たか」と感嘆せずにはいられなかった。
 
 もちろん、その立役者は指揮者インバルであることは間違いないだろう。この人は、自らマグマのように熱くなって一気呵成に壮大な音響を構築させることが得意だが、この日は慎重にドライブし、冷静にバランスを取ることで、曲に充満するエネルギーをうまく放出していた。
 要するにインバルは、曲によって、あるいは作曲家によって、どのような手法でアプローチするのが最善であるかを知り尽くしているのだ。これはもう、さすがとしか言いようがない。