クラシック、オペラの粋を極める!

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2012/3/7 読響

2012年3月7日  読売日本交響楽団定期演奏会   サントリーホール
 
 
「そこの野郎ども! ブルヲタども! スクロヴァのブルックナーであるぞ。とっとと集まらんかい!!」
 
 ひっひっひ。集まった集まった(笑)。
   年齢は20代後半から50代。一人での来場者多数。女にモテず、‘彼女なし’多数(推定)。自宅のステレオで聞いているのは古くて録音の悪いクナッパーツブッシュ盤。音楽聞いて精神性のなんたらを語るのが好き。「チェリビダッケはすごかった。ヴァントもすごかった。」と聞いていないヤツに自慢気に語るのが好き。小澤征爾のことを「オザワ」と呼び捨てするのに、朝比奈隆のことを「朝比奈先生」と呼ぶ。世間から何と言われようが知ったことか。低俗なオマエらには音楽の真髄など分からんだろ。
 
 ・・と、こういうブルックナー信者の男たちが続々とサントリーホールに集結。チケットは前売りで全席完売。普段はめったに起こらない「休憩時間での男子トイレの長蛇の列」現象が、その異様さを物語る。
 
あ~キモい(笑)。
 
あ、オレもそのうちの一人か・・・。
 
 いや、お願いだから否定をさせてくれ。オレは決してブルヲタではない。単なるクラシック好き。チェリも朝比奈も全く崇拝していないもん。
ただ、スクロヴァのブルックナーは一聴の価値があると思っている。諸君はザールブリュッケン放送交響楽団と録音したブルックナー全集を聞いたか?あれは本当に腰を抜かすで。文句なしの名演。ああいう演奏を生で聴ければ最高だ。
ということで、私もこっそり会場入り。信者と間違えられないように、男子トイレの長蛇の列には並びませんでした(笑)。
 
 
 それにしても、スクロヴァ先生(あ、『先生』って言ってしもうた)のなんと矍鑠(かくしゃく)としていること!御年88歳だというのに、椅子に座らず立って指揮ですよ。しかも暗譜。すごいなあ。腕の振りも鋭敏で、テンポもいたってきびきびと刻む。巨匠指揮者にありがちな悠久の間延びは皆無。黄昏、哀愁とは無縁の若々しい演奏。頭の中にはっきりと「あるべき形」が存在していて、それを余すところなくタクトで表現している。素晴らしいではないか!
 
 残念だったのは、読響の中に集中力を欠いた奏者が何人かいたり(特に金管)、また、聴衆の側にも水を差すかのようなフライング拍手が出てしまったりで、張り詰めたような緊迫感が今ひとつ生じなかったこと。もし、演奏側も聴く側もすべての人が一音一音をかみしめながらブルックナーに対峙したら、きっと天から神様が降りてきて生涯忘れられない公演になるだろう。少なくとも指揮者はその領域に入っている。あとはオーケストラと我々の問題である。