クラシック、オペラの粋を極める!

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2012/2/28 あらかわバイロイト 修道女アンジェリカ、ジャンニ・スキッキ

2012年2月28日  あらかわバイロイト   サンパール荒川
プッチーニ   修道女アンジェリカ、ジャンニ・スキッキ
指揮  佐藤正浩
演出  彌勒忠史
腰越満美(アンジェリカ)、小畑朱実(公爵夫人、ツィータ)、田辺とおる(ジャンニ・スキッキ)、中村芽吹(ラウレッタ)、武井基治(リヌッツィオ)   他
 
 
「それにしても、ワーグナーの聖地にして総本山であり、世界でも最も敷居の高い音楽祭の開催地を団体名に冠するなんて、大胆っていうか、いい度胸してるよなあ。そもそもいいのかよ、勝手に名前使って。許可取ってんの?」
 
・・・などと、いらん心配してしまう今日この頃の私である。
 
 まあ、そういうことは置いておき(きっと問題ないのだろう)、「たとえ規模は小さくても、ワーグナーのパイオニア精神を肝に銘じ、ワーグナーに徹底的にこだわりながら、少しでもバイロイトに近づくべく日々精進し、活動していこう。」という志があって、創立にあたりその名にあやかったに違いない。それ自体はとても見上げたものである。
 
 実際、第一回の旗揚げ公演(2009年)で、いきなり無謀にも(失礼!)「パルジファル」を上演して、オペラ関係者やファンの度肝を抜いた。その後も「ワルキューレ」「神々の黄昏」といった大曲に果敢に挑み続けている。
 
 そんな風雲児あらかわバイロイト、本家のように「ワーグナーしかやらん!」のかと思っていたら、どういうわけか今回はプッチーニ(笑)。
 
 これで「ボエーム」とか「トスカ」だったら笑ってやるところだったが、「修道女アンジェリカ」&「ジャンニ・スキッキ」とは、こりゃまたやられた、一本取られた。私にとって、「修道女アンジェリカ」はキラー・コンテンツ。目に入れても痛くない‘いとしの’アンジェリカをやるとなっては、行かないわけにはいかぬではないか!
 
 かくしてバイロイト詣でならぬ荒川詣で、いつも東京メトロ日比谷線を利用しているのに通過するだけで一度も利用したことがない三ノ輪駅を降り、初めて「サンパール荒川」に足を運んだ。つまり、「あらかわバイロイト」初見参というわけだ。
 
 さっそくお手並みを拝見させてもらったが、二期会や藤原のような老舗に比べれば実力的にまだまだかもしれないが、だからといって、舐めてかかるのは無礼というもの。出演した歌手もオーケストラも、「シロウトに毛が生えたようなもの」では決してない。ちゃんとプロの水準である。例えば、アンジェリカを歌った腰越満美はそもそも日本を代表するソプラノ歌手の一人であるし、田辺とおるや小畑朱実といった名の知れた人もいる。それ以外にも、「お!?なかなかやるじゃん!?」といった腕前を披露した人も少なからず見受けられた。
 
演出は、カウンターテノールとして最近その名前を見かけるようになった彌勒忠史。アンジェリカはオーソドックスであったが、ジャンニ・スキッキでは、ドナーティ家の遺族達にサッカーユニフォームを着せ、ジャンニ・スキッキとラウレッタにはテニスコスチュームを着せ、公証人たちにはレフリーの格好をさせるという、一風変わったアレンジを加えた。それに何の意味があるのかはよく分からなかったが、妙なインパクトはあったし、ちょっとした味付けにはなっていた。
ジャンニ・スキッキの狡賢い遺産の横取りに慌てふためくドナーティ家の連中に対して、レフリーの公証人が「静かにしなさい!」とイエローカードを突きつける場面があって場内から笑いが起こったが、演出家は要するにこれをやりたかったということか!?
 
舞台装置や大道具小道具が簡素になってしまうのは、当然だ。限られた予算で舞台を製作するのは本当に大変だろう。
ということで、多少のことは目をつぶろう。ぎこちない演技にも、下手くそなイタリア語にも(笑)。きちんとオペラの体裁が整い、無事に上演された。それだけでも十分賞賛に値するであろう。
 
たまたま今回はプッチーニと横道に逸れたが、秋には再びワーグナーに戻って、ラインゴールドを上演する予定であるとのこと。是非とも全曲制覇を目指して頑張ってほしいものである。私も、気が向いたらまた行く・・かもしれません(?)。