2012年2月25日 聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団 横浜みなとみらいホール
バッハ マタイ受難曲
指揮 ゲオルグ・クリストフ・ビラー
バッハが生前にそこを拠点にして活躍し、そして永眠の場所となったライプツィヒ・聖トーマス教会。この由緒ある教会に属し、800年(!)という歴史をもつ特別な合唱団が日本にやってきた。しかも、‘あの’ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とともに。で、演奏するのはバッハの至高の名作とされるマタイ受難曲。
普通なら、「これは究極のコンサートだ!!」となるのだが・・・。何度も何度も来日して、その度にマタイを演奏しているので(いったい何度目だ?)、スペシャル感が薄れてしまっている。もう少し出し惜しみした方がいいのでは?? あ、余計なお世話か。これでガッツリ稼いでいるわけですからね(笑)。
確か4年前にもこのコンビでやってきて、やっぱりマタイをやった。この時、私はもう一つの演目だった「ロ短調ミサ曲」に行ったのだった。
今回は「800年記念」というタイトルに惹かれて、ついチケットを買ってしまった。
まあそれはともかく、この合唱団がバッハの伝統を脈々と受け継いできており、本物のバッハが聴けるのは間違いない。オケはゲヴァントハウス管だし。これぞ正統。これ以外の演奏団体は全部ニセ物(笑)。(冗談です)
公演の感想の前に、まず最初に「よくぞ来てくれました。」とお礼を言いたい。
合唱団員の多くが10代の少年たちである。ほとんどの御父兄の方々が「日本は本当に大丈夫なのか?」と危惧したことだろう。そうした困難を乗り越えて、バッハ使節団はやって来た。関係各位の御尽力に敬意を表そうと思う。
演奏は、さすがというか、貫禄というか、崇高かつ神々しさに満ち溢れていた。
おそらく私は、上に書いたように「これぞ本物のバッハ」という先入観や思い込みに丸め込まれている。800年の伝統にあっさりとひれ伏し、跪き、バッハの詔としてありがたく頂戴している。
でも、それはそれで構わないと思った。いい演奏か悪い演奏かを判断するのではなく、「そういうものだ」と受け入れる。そのように聞くのも悪くない。なぜなら、音楽がバッハだから。バッハこそ、西洋音楽の原点なのだから。
字幕が付いたのも、とてもありがたかった。マタイの物語がいかに劇的であるかを改めて発見した。
特に、キリストが裁判にかけられ、群衆が「死刑にせよ!」と叫ぶシーンには、戦慄を覚えた。この群衆を歌うコーラス、すなわち聖トーマス教会合唱団の魂を揺さぶる歌こそがこの公演のハイライトであったと思う。