2011年10月17日 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 サントリーホール
指揮 クリストフ・エッシェンバッハ
何をいまさらと言われそうだが、改めて痛感した。
「なんだかんだ言っても、やっぱりウィーン・フィルはスゴい。偉大である。」
実を言うと、前半のモーツァルトではそれほど湧き上がるものがなくて、「こりゃ後半も期待しない方がいいかな」なんて思っていた。
ところが、である。
休憩後、大編成に変わって大勢の奏者が続々とステージに上がり、その中にコンマスのシュトイデや、往年の名プレーヤー・フルートのシュルツ、ティンパニーのアルトマンらの顔を見つけて(前半は降り番だった)、ただならぬ雰囲気が立ち込めた。
ソロホルンによる起床ラッパが吹かれる。その音色に思わずのけぞる。
クレッシェンドの後、強奏される主題旋律「ダン・ダン・ダ・ダ・ダ・ダン!」でもうノックアウト。早っ!!
それにしてもこのオーケストラの合奏能力の高さはいったい何??
特に金管楽器の壮麗な響きには参った。文字通り‘金’の音色。
もちろん弦楽器も木管楽器も私が知っている‘あの’ウィーンの響きそのものだった。
また、各奏者がみんないい顔しているんだ。音楽の都から遣わされた宣教師。余裕の顔で演奏しているその姿に、強烈な自負とプライドが感じられる。ハプスブルクの栄光が見え隠れする。
要するに、これが「伝統の力」ってわけですねー。(ちょっと月並みな言葉であるが)
当初私は指揮者エッシェンバッハのメッセージを汲み取ろうと、彼が放つ仕掛けにじっと注意を傾けていたのだが、途中から「やーめーた」になって、ただウィーン・フィルの合奏能力に圧倒されながら、大音響に身を委ねていた。
そのエッシェンバッハであるが、彼のタクトはお世辞にもエレガントとは言い難い。手はバタバタしていて、クロールでも平泳ぎでもない犬かきのよう(いくら何でもそりゃ失礼だろ!?)。
でも、コンマスのキュッヒルをはじめとして、各奏者が彼の音楽を信頼し、ついていこうとしているのがよく分かった。つまりエッシェンバッハは、格好ではなく、内に込められた音楽性一つで世界最高の銘器を操っているのだ。分かる人には分かる、玄人筋の指揮者。まあ好みの問題はあるにせよ、もっと評価されてもいいだろう。そもそも、選ばれたごくわずかな者しかウィーン・フィルを振ることができないのだから。
さあこれで、今年の栄えある「国内コンサート部門ベストテン」で、まずは順当無難に暫定1位の座に着いたウィーン・フィル。だが、決して図抜けたわけではない。