クラシック、オペラの粋を極める!

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2015/10/6 ウィーン・フィル1

2015年10月6日  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団   サントリーホール
指揮&ピアノ  クリストフ・エッシェンバッハ
モーツァルト  ピアノ協奏曲第23番
チャイコフスキー  弦楽セレナード
プロコフィエフ  交響曲第1番古典


「今年はエッシェンバッハか・・。なんだかなー。プログラムもイマイチ地味だしなあー。そのくせチケット代は高ぇよなあ・・。」
 当初の期待値は決して高くなかった今年の公演。ところが、予想を大幅に上回る凄演にびっくり仰天。うーん、まいった。恐れいりました。
 よくよく思い返してみると、過去のエッシェンバッハの公演においても、「最初は全然期待していないのに終わってみると素晴らしかった」という事ばかり。前回のウィーン・フィル然り、その前のフィラデルフィア管然り、もっと昔のパリ管やウィーン響も。

 毎回満足のいく結果に終わっているのにも関わらず、その次にまたエッシェンバッハが来ると知ってもイマイチ期待が高まらないのはいったいなぜなのだろう??

 そこら辺の謎と正体は、本公演でも見つけられることが出来た。

 エッシェンバッハが振る音楽は、我(が)が強くなく、自己顕示性に乏しい。タクトもお世辞にも格好良くなく、カリスマ性が感じられない。
 裏を返せば、作品あるいはオーケストラの引立て役に回り、それがバッチリはまっていると言える。今回にしても、ウィーン・フィルをタクトで引っ張るというより、ウィーン・フィルを下から押し上げているような、そんな印象を受けるのだ。もちろん、天下のウィーン・フィルだからというのもあるからかもしれないが。

 プログラムを一つ一つ見ていきたい。まずピアノコンチェルト。
 かつて名ピアニストだったエッシェンバッハだが、すっかり指揮者としての活動がメインになってしまい、彼のピアノを聴く機会はほとんどない。私もものすごく久しぶりであった。
 コンチェルトであっても、エッシェンバッハのピアノはやはりオーケストラと一体化する。ピアノの音色そのものは硬質なのに、伴奏と絶妙にブレンドし、全体としてまろやかになるという摩訶不思議。
 アンコールのシューマントロイメライが、究極の絶品。単調なメロディーの繰り返しなのに、これほど情感が詰まり、永遠に変幻を繰り返すかのような演奏に、完全に打たれてしまった。

 二曲目、弦楽セレナード。
 ウィーン・フィル弦楽器奏者の高度な演奏能力が光る。チャイコ特有の艷やかさというより、縦横無尽で猛々しいほどの圧巻的迫力に、聴いている側はノックアウト。
 第一楽章終了後に一部から出てしまった拍手。だが、気持ちは分かる。楽章間でありながら思わず拍手したくなる演奏。そういうのは全然ありだ。ここでも、エッシェンバッハの下からの押し上げが見え隠れする。

 メイン、プロコの古典。
 解像度の高い演奏。今度は管楽器群の切れ味鋭いアンサンブルに脱帽。
 古典をコンサートのメイン曲として聴いたことはこれまでになく、今まで小編成であることや演奏時間の長さ、あるいはタイトルにも騙されていたが、大オーケストラのメインプログラムを張るに相応しい立派な作品であったことを大発見。

 本当に素敵な一夜だった。本日のモーツァルト、はたして連日のホームランなるか。