クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

来日オペラ問題

 今年の来日公演の目玉であったボローニャ歌劇場とバイエルン州立歌劇場の公演がいよいよ近づいてきた中で、大変残念な事態に見舞われている。既に御存知のとおり、主役を務める世界的スター歌手を始めとする多くの予定歌手の来日キャンセル発表が相次いでいるのだ。
 
 そのほとんど多数が病気を理由にした降板であるが、まあハッキリ言って、大ウソ。以前、私はこの業界で働いていた人からこっそり教えてもらったことがあるが、本当に病気のためやむを得ずキャンセルになってしまうことなど五分の一もないとのことだ。約半分が契約上のトラブル、残り半分が本人の気まぐれとワガママだそうである。「飛行機をファーストクラスにしてくれないのなら、行かないよ」なんてこともあるそうだ。で、結局物別れとなった時、本人(あるいはそのマネージメント)側から病気ということにして申し出てくることもあれば、そうでなくても主催者の一存で勝手に病気と発表することもある。とのこと。
 
 今回で言えば、理由はただ一つ。原発事故。
 
 楽しみにしていたファンの落胆はよーくわかる。
特に今が一番の旬であるヨナス・カウフマンと、「世紀のテノール」と呼ばれ存在が唯一無二であるファン・ディエゴ・フローレスのキャンセルは本当に本当に痛い。私だって大がっかり、残念だ。
 
 ファンの怒りも、ほんの少しわかる。
 困難や苦しみを乗り越え、今、日本は一生懸命頑張っているのに、それをあっさり否定されるようなものだから。また、さんざんフローレスやカウフマンで宣伝しておいて、それが来ないばかりか「払い戻ししません」というのは騙された気分になるだろう。
 
 だが、ネットのクラシックサイトや掲示板、ブログなどで、「いっそのこと公演自体を中止して欲しい」という意見を見ると、私はとても寂しくなる。
 それくらいならいいが、「抗議の意思を表明するため、会場で思いきりブーイングしてやる!」などという過激な意見には、怒りが込み上がる。
 
 例えば、今回フローレスが歌う予定だったベッリーニ清教徒フローレスが落っこちた瞬間、チケットがネットオークションなどで投げ売られたが、ちょっと待て。このオペラがこれまでいったい日本で何度上演されたか知っているのか?? 
 
プロダクションの数、たったの「2」だ。70年遡って調べた。
 
 清教徒を観ることは、滅多にない、稀少な、貴重な機会なのだ。どうしてこんな貴重な機会を軽々しく「中止せよ」というのか。
 
 オペラの楽しみって、歌手だけなのか??
 
 どうしてベッリーニの音楽を楽しみにできないのだ?
 
どうして本場イタリアのボローニャ歌劇場が製作した舞台を見たくないのだ?
 
 フローレスが来なかったからといっていとも簡単にチケットを売り飛ばしたり、「公演自体を中止して欲しい」などと言う人は、私に言わせれば、そんな人達は本当のオペラファンではない。本当の音楽ファンではない。
 
 クソみたいな言い訳でキャンセルしてきた歌手の連中にはがっかりしたが、とにかく日本は今、外国人から「危ない国、行きたくない国」とみなされているのだ。
 日本人だって、今から10年前、アメリカへの観光・ビジネスの足が一斉に遠のいたのだ。
 
 文句はせいぜい主催者に直接言ってください。
 
 主催者だって、この緊急事態を乗り切るべく、血眼になって仕事をしていると思うけど。
 
 とにかく、やってくるカンパニーの人たちは、日本に行くべきかやめるべきか相当葛藤があって、それでも日本のオペラファンのために駆けつけくれるのだ。私は心から歓迎の拍手を贈るつもりでいる。