クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

ザルツブルクへの道1

 昨年の今頃。8月のバイロイト音楽祭出陣を目前に控え、いても立ってもいられなかった私は、「バイロイトへの道」と題した記事を書いた。
 あれから一年。夏の音楽祭のもう一つの王者であるザルツブルクへの旅行があと1か月、徐々に迫ってきている。
 初めてだったバイロイトと違い、ザルツは5回目なので、昨年のようなそわそわウキウキ感はないのだが、楽しみであることには間違いないので、今回「ザルツブルクへの道」と題して記事を書いてみようと思う。
 
 モーツァルトの生誕地・古都ザルツブルクの魅力は沢山あるが、やはり何と言っても毎年の夏に開催されるフェスティバルに尽きるだろう。ウィーンフィルを始めとする一流の音楽家、音楽団体が一堂に集結し、豪華なオペラやコンサートが連日のごとく繰り広げられる。クラシック音楽好きなら誰もが一度は行ってみたい憧れの音楽祭。そして、一度行ったらまた行きたくなる音楽祭。それがザルツブルク音楽祭だ。
 
 中学生で目覚め、大学生の頃から本格的に聴き漁るようになったクラシック音楽。そんな私にとって、ウィーンとザルツブルクの二大音楽都市は夢と憧れの地。社会人二年目の夏、夏期休暇を利用して生まれて初めてヨーロッパに行こうと決めた時、行き先としてルツェルンブレゲンツ、ウィーン、そしてザルツブルクを選択したのは、いわば必然の流れであった。
 この時の旅行記はいつか書きたいと思っているんだけどね・・・。一緒に行ったOくんからも「早くしろ」と急かされている。(彼は、この旅行の時、親友のよしみでいろいろ足労をかけたことについて、とにかくツッコミのコメントを入れたくて、手ぐすね引いて待っている(笑)。)
 
 1988年の8月。ずいぶんと昔のことだなあ。当時、なにぶん不慣れで情報収集もままならず。音楽祭が行われていることは当然知っていたが、必ずしもそれだけを目当てにして行ったわけではない。観光だけでも満足。ということで、ザルツブルクの訪問滞在は、‘飛び込み’だった。
 世界的なフェスティバル、そもそもふらっと立ち寄ったところでチケットが買えるはずもないと思い込み、半ば諦めていた私。Oくんが街中にあったとあるプレイガイドで「ダメもとで聞いてみよう」と尋ねてくれたが、「あるわけないじゃん」とそっぽを向いていた私。「あるってさ!」と言われて思わず「うっそ~!?」
 こうしてチケットを買ったのが、小澤征爾指揮ウィーンフィルオネゲル作曲「火刑台上のジャンヌ・ダルク」)とルトスワフスキ指揮オーストリア放送交響楽団(現ウィーン放送響。指揮者の自作自演プログラムで、コンチェルトソリストとしてムターとツィメルマンが出演)の二公演だった。思いがけず音楽祭のチケットを手にすることが出来、かなり舞い上がった。
「よっしゃ、こうなったら我々も歩いて会場入りじゃなくて、豪華にタクシーを手配して乗り込もう!」
 鼻息荒く、精一杯セレブリティを気取ったつもりだったが、肝心のいでたちはイマイチ。白ワイシャツにネクタイのみ(ジャケットなし)の格好は、右も左もバッチリ正装で決めている紳士淑女の中では完全に沈んだ。
 まあ、仕方がない。勝手が分からなかったのだ。そんなことよりも、‘あの’ザルツブルク音楽祭に自分も参加しているという喜び、自己満足は格別だった。
 
 23年が経った今。
 状況は変わった。旅行とクラシック音楽については相当経験を積んでいる。飛び込みなんてもはや絶対あり得ない。プログラムやチケット発売情報は入念にチェック。インターネットで前年中に申込を完了し、ほぼ全ての希望演目について入手済み。
 
 今年の音楽祭であるが、好みの問題もあって人によって違うだろうけど、私にとって最大の目玉はティーレマンが振るR・シュトラウスの「影のない女」だ。ここ数年、夏はバイロイトにかかりきりだったティーレマンが満を持してザルツに登場し、本腰を据えてシュトラウス畢生の大作を手がける。彼の織りなすサウンドシュトラウスの豊潤な音楽が一つになり、きっと祝祭大劇場が揺れることだろう。この上演はNHK-BSで中継放送されるので、録画忘れのなきよう。
 ややマニアックだが、サロネンが振るヤナーチェクの「マクロプロス事件」(A・デノケ主演)も同じくらい楽しみだ。
 
 最大の問題はムーティが振るヴェルディマクベス。いち早く申し込んだにもかかわらず完全ソールドアウトで、正攻法では現時点で入手不能だ。実は、私は現地のブローカーに手配を依頼していて、とりあえず(あくまでも一応)押さえてもらっている。ところが、これが目ん玉飛び出るくらい高くふっかけられているわけよ。まだチケット代の支払いを行っていないが、いっそのことキャンセルしちゃおうかと迷っている。あくまでも正攻法で正規チケットのリセールが出てくるのをギリギリまで待ち、ダメなら鑑賞をスパッと諦めようかと思っている。同じ日のほぼ同じ時刻に別会場で、室内楽コンサート(ラン・ラン、レーピン、マイスキーの黄金トリオ)があって、そっちを既に正規入手済み。この公演もソールドアウトだし、十分魅力的だ。
 
 というわけで、仮にマクベスがなかったとしてもザルツでのゴージャスな休暇を堪能できることは間違いない。
 
 後は、とにかくキャストの変更がないことを祈るばかりです。もう、最近、そういうのばっかりだからさ。どうか一つ、よろしくお願いします。