2011年7月4日 マリエッラ・デヴィーアソプラノリサイタル 東京オペラシティホール
マリエッラ・デヴィーア(ソプラノ)、ロゼッタ・クッキ(ピアノ)
トスティ、ショパン、リストの歌曲
ベルカントの女王が御来日である。
日本には一昨年、去年と立て続けに来日しているものの、活動拠点の基本はあくまでもイタリア国内に据え、安請け合いであっちこっちの歌劇場をせわしなく飛び回る潮流に乗ろうとしないので、依然として世界の頂点に君臨しているのかどうかが少々目に見えにくい。年齢的にも既に大ベテランの域に入りつつあるので、思わず「デヴィーアもそろそろ‘上がり’に近づいてきた??」なんて邪推してしまいそうだ。
とんでもない!
通常のリサイタル公演には、前菜、プリモピアット(第一の皿)、セコンドピアット(メインディッシュ)といった配分やアクセントが見受けられることしばしだが、デヴィーアは最初の一曲目から入魂の歌唱。アンコールも含め、プログラム全ての曲がメインと言ってもいいほどの出来栄え。テクニックに衰えは見られず、依然として完璧なので、中音域にしても高音域にしても力ずくの音、澱んだ音が一切無い。彼女の持ち味である柔らかく温もりのある歌声がホールいっぱいに響き渡り、それに包み込まれる心地良さといったら!ああ、生きていて良かった!って感じ。
この日の前日、私は友人の結婚披露宴に出席し、新郎新婦の心の底から嬉しそうな笑顔を見て、こちらもとても嬉しくなった。幸せをお裾分けしてもらった。
そしてこの日。デヴィーアからも幸せを存分にいただいた。なんという喜び。Io sono molto felice!
だというのに、日が変わって今日職場に行ったら、また普段のキビシイ日常と現実に戻されて愕然。くそっ、夢が永遠に続いてくれたら良かったのに・・・・。