クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

歌手たちの語学力

 最高水準のオペラのライブ中継を世界に配信しているメト。ニューヨークに行かなくても、日本でも映画館でメトのオペラを楽しめるようになり、ファンの間ではすっかりお馴染みとなった。
 
 このライブビューイングでは、単にステージだけでなく、毎回必ず幕間のインターミッション中に出演者の即席インタビューが行われる。メトの看板歌手であるルネ・フレミングはホスト役(司会進行とインタビュアー)がすっかり板についていて、見事な手さばき。いっそのことレポーターに転身されてはいかがでしょうか、フレミングさん ・・・ って、今日はそういう話じゃない(笑)。
 
 いつも私が感心するのは、世界各国から集まった国際スター歌手の流暢な英会話だ。ドイツ人、イタリア人、フランス人、その他母国語が英語でない出演者たちが、ほとんどネイティブと変わらないくらいの英語力を駆使してインタビューに答え、ジョークを交えながら話をしているのを見るにつけ、「この人たち本当にすごいな」と感心する。
 
 オペラを歌う以上リブレットに書かれてある言語をこなす必要があり、語学の習得は不可欠。また、世界中の劇場に出演するために旅するのだから、英語を含む複数の言語を操るのなんて当たり前で朝めし前なのかもしれない。
 例えば、ファン・ディエゴ・フローレスは母国語がスペイン語で、オーストリア国籍も持っていて奥さんはドイツ人だからドイツ語もある程度出来るだろうし、もちろん英語、イタリア語は堪能。ロシア人のネトレプコも母国語に加えて英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語に堪能で、旦那の影響でスペイン語も既にマスターしているかもしれない。ラトヴィア人エリーナ・ガランチャのドイツ語、英語、フランス語、ロシア語、イタリア語の能力はネイティブ並みであると聞いた。すっげーな。
 
 それに引き換え、たった一つの英語でさえ、中学、高校、大学と勉強しているのにもかかわらずほとんど話せない日本人はいったいなんなのだろう。英語を流暢に話す人でさえ、発音が「あ、いかにもニホンジンがしゃべる英語だな」というふうに聞こえる。
 
 西洋の場合、言語はたくさんあっても、文法のしくみやシステムは何となく似ていて、コツを掴めばうまく応用活用できるのかもしれない。言語のしくみが根本的に異なる東洋人は最初からハンディを背負っているのかもね。
 
 さて、この話題について、オチをつけよう。
 
 先日鑑賞したメト・ライブビューイング「イル・トロヴァトーレ」に出演しマンリーコを歌ったネクスト三大テノールの一人、マルセロ・アルヴァレス。幕間のインタビューでは、意外にも英語でのやりとりに大苦戦。乏しい語彙の中から一生懸命当てはまる単語を見つけ出し、脳の中でスペイン語から英語へ変換するという面倒な作業を経て、一生懸命答えていたが、おそらく彼が言いたい事の半分も言えていない。その場に一緒にいた共演者のS・ラドヴァノフスキーに「上手く言えなかったら助けてよね」みたいな感じで肩に手をやって、そのもどかしそうな表情が笑えた。見た限り、英語力はたぶんオレとそんなに変わらないレベルで、なんかとても親近感を覚えた(笑)。
 
 ということで、親愛なるマルセロ、急遽ピンチヒッターで日本へようこそ!こんな大変な事態になっている中でようこそいらっしゃいましたね!感謝しますよ。