METライブビューイングに行った。シーズン開幕、演目がなんとメト初演、しかも主役ネトレプコということで、注目の目玉公演である。現地ニューヨークではさぞヒートアップしたことであろう。
指揮 マルコ・アルミリアート
演出 デヴィッド・マクヴィカー
このブログをお読みの方は御存知のとおり、私はライブ至上主義の人間なので、このライブビューイングにおける私の扱いとしては、‘しょせんは映画の類’である。演奏上の細かいニュアンスや息遣い、ステージから伝わる緊迫感などを求めるつもりはさらさらなく、「どんなものかを大雑把に傍観」しているにすぎない。スピーカーから出てくる音をもって演奏の善し悪しを語ることは慎もうと思う。
だが、純粋に、オペラそのものを‘見た目’で楽しむことは出来る。で、今回のアンナ・ボレーナもとても楽しかった。それで十分であろう。
主役のネトレプコの演技にはとても感心した。立ち振る舞いや佇まいが毅然としていて、重厚な役もしっかりとこなすことができることを見事に証明していた。既にウィーンでこの役のデビューを果たしていたこともあり、貫禄と余裕が感じられた。なんか一皮向けた感じがする。どうやら次のステージに階段を一歩上がったようだ。
アブドラザコフも好演。一生懸命役作りをしたことが一目瞭然。何と言っても、カッコいいし。
以上の二人に比べると、セイモウ役のグバノヴァは華がなく、残念。もともとガランチャだったんだよなー。余計に残念。
演出は、いかにもメトらしく正統的で写実的で重厚なもの。だが、単なる美しさだけを求めたのではなく、作品を徹底的に掘り下げ、「史実」に深く迫ろうとしている点で、さすが名演出家マクヴィカーの面目躍如である。
衣装が「まさにホルバインの絵そのものだなあ」と思って見ていたら、衣装担当本人が「ホルバインからヒントをもらっている」と正直に語っていた。