クラシック、オペラの粋を極める!

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2013/2/9 ギョーム・テル

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2013年2月9日  ネザーランド・オペラ(アムステルダム
ロッシーニ  ギョーム・テル(ウィリアム・テル
指揮  パオロ・カリニャーニ
演出  ピエール・アウディ
ニコラ・アライモ(ギョーム・テル)、ジョン・オズボーン(アルノール)、パトリック・ボレイエ(メルクタール)、クリスティアン・ヴァン・ホーン(ゲスレル)、エウゲニー・ワルニエ(ジェミー)、マリーナ・レベッカ(マティルデ)、ヘレーナ・ラスケル(エドヴィージェ)   他
 
 
 このところ世界中で引っ張りだことなり、めざましい活躍を続けているのが、指揮者のカリニャーニ。ウィーン、ミュンヘンザルツブルク、パリ、チューリッヒアムステルダム、ニューヨーク、そして東京・・・。まさに世界を股にかけて飛び回っている売れっ子指揮者と言える。イタリア人のため、圧倒的にイタリア物を振る機会が多いが、フランクフルト・オペラの音楽監督を長く務めていたこともあって、ドイツ物も含め、何でも振れるのが彼の強みだ。
 
 だが、これだけモテモテなのはレパートリーの懐の大きさだけが理由ではないだろう。指揮者としての才能はもちろんだが、きっと人格的にも優れていて、劇場関係者から信頼を置かれ、そして好かれているからに違いない。プロフィールの写真もたいてい笑っていて、とてもいい人そうだ(笑)。
 
 日本でも、昨年は読売日響と二期会で来日して名演を披露。今年も新国立劇場注目の新演出「ナブッコ」を振ることになっている。徐々に知名度も上がっているが、まだまだ「所詮、読響や新国立を振る程度の指揮者」と思われているふしがある。もっと評価されていい指揮者だし、今度のナブッコもとても楽しみだ。
 
 そのカリニャーニのギョーム・テル。まずは有名な序曲で早くも一発パンチをかました。ノリノリの熱い演奏だ。私の右隣の年配の女性は、例の行進曲の旋律とリズムに引き込まれて、首と身体を揺さぶっていた。隣でこういうことされると普通は困りものだが、まあそうしたくなる気持ちはよーく分かった。
 
 驚異的だったのは、この序曲から最後まで、4時間を超える大作にもかかわらず、弛緩することなく終始緊張感のあるドラマチックな音楽を構築させていたこと。物語の進行に音楽をピタリと寄せ、登場人物の感情をストレートに表現させるので、聞いている人間が常にドラマの中に移入することができるし、集中して鑑賞することができる。更に、盛り上がる所では思い切り盛り上がるので、高揚感もたっぷり。いや本当に素晴らしい指揮者だ。オペラを振る指揮者は、やっぱこうじゃなきゃ!
 
 歌手の中では、アルノール役を歌うオズボーンに注目し、期待していた。近年彗星のごとく登場し、上昇期運に乗っているアメリカ人テノール。少し前にパッパーノが指揮した同曲の全曲録音が発売されて、なかなか評判が良いが、このディスクでアルノール役を歌っているのが、オズボーンだ。
 録音だけでなく舞台もこなしているだけあって、自信に満ちた歌唱だ。安定感もある。テノール殺しと言われている第4幕冒頭のアリアもバッチリ決まって、万雷の喝采を浴びた。欲を言えば、声にもう一段の輝きが欲しい。あと、演技がちょっと軽い。(なかなかフローレスのようにはいかないのは分かっているけどさ。)
 
 主役テルのアライモは、ちょっとパッとしなかった。体型から貫禄だけは十分あるのだが。この人はどちらかと言うと主役というより脇役タイプだと思う。昨年ペーザロでも聞いたけど、脇役として出演し、いい味を出していた。実は、今年のペーザロでも同役(ギョーム・テルのタイトルロール)を歌うことになっている。駆けつけるつもりでいるので、もっと頑張ってもらいたい。
 
 今回の配役では、むしろ女性陣の素晴らしさが目立った。特に、マティルデを歌ったM・レベッカ。5年前にロッシーニ・オペラ・フェスティバル来日公演で彼女を聞いているのだが(マオメット2世のアンナ役)、ほとんど記憶になく、今回も全然期待していなかった。大変美しく伸びのある歌声に大いに魅了された。
 
 P・アウディ(オーディ?)は、ここアムステルダムを拠点にしつつ活動の場を広げ、徐々に世界的に名が知られるようになった演出家だ。私は、彼が演出した舞台を見るのは今回が初めて。なので、これ1回を見ただけでは、どういうタイプの演出家なのか、まだよく分からない。
 ステージの空間を大きく取り、象徴的なのかあるいは抽象的なのかよくわからない巨大な装置を駆使して、見た目ではスケールの大きな舞台に仕立てている。
 だが、物語の進行や登場人物の動かし方については、いたってオーソドックス。そういう意味では、可もなく不可もなし。
 
 気になるのは、このプロダクションがメトロポリタンオペラとの共同制作であるということ。
 御存知のとおり、巨大な装置や豪華衣装などで見た目はスペクタクルだが、肝心の中身は超が付くオーソドックスな舞台を作り続けるメト。スポンサーや大金持ちからの寄付によって劇場が支えられているため、保守的にならざるを得ない事情があると聞く。
 
 ヨーロッパで革新的と言われる多くの演出家たちが、メトで仕事をすると、どういうわけか一様におとなしくなるという不思議な現象。
 
 耳元で囁かれているのではあるまいか。
「ギャラは弾むよ。その代わり・・・分かっているだろうね。ここはね、メトなんだからね。頼むよ。」
 
 まさかねえ・・・。
 
 今回の舞台、レベルの低いニューヨークの愛好家には十分に受け入れられそうだ。
 多分、アルノール役はF・D・フローレスなんでしょうねえ・・・。
 
以上で、予定していた演目はすべて無事、観終えました。
劇場を出ると、昼間に降った雪は止んでいて、積もった雪も跡形なく消えていました。後は無事に帰国できればそれで良し・・・。