クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

ブライアン・イーメル

昨年12月にミラノで鑑賞した蝶々夫人でピンカートンを歌ったアメリカ人テノールBryan Hymel。その時の鑑賞記にも書いたのだが、名前の読み方が「ハイメル」なのか「イーメル」なのか「ヒンメル」なのか、イマイチ不明だった。
不明ということは、すなわち日本において名声がまだ完全に確立されていないということ。彼のキャリアを見渡せば、既にメト、ウィーン、コヴェントガーデン、パリ、ミュンヘン、そしてミラノと、世界のトップ歌劇場を軒並み制覇しており、もう十分に一流歌手だ。だというのに、なぜか日本ではその評判が伝わって来ていない。
 
まあ、所詮ニッポンはオペラ後進国だからな。仕方がないけどな。
 
ちなみにウィキ日本語版には「ハイメル」になっている。
 
さて、一昨日の日曜日のこと。
私は、未視聴のままだった2012年メト上演の「トロイアの人々」ライブ中継録画を自宅で鑑賞した。
Hymelさんは、このオペラの主役の一人であるアエネアス役で出演していた。
 
皆さん御存知のとおり、メト・ライブビューイングでは、幕間の休憩中、司会者が出演者たちにインタビューしたりして、観ている人の理解の手助けを行っている。この時、会話のやり取りの中で、Hymel氏のことを「イーメル」と呼んでいることを確認した。連中は皆アメリカ人だったから、呼び方は「イーメル」でまず間違いなかろう。
 
こうして、一つのモヤモヤが解消された。
 
もっとも、現地でそう呼ばれているからといって、これから日本でもそう呼称されるとは限らないけどな。
 
そのイーメルが歌ったアエネアスであるが、声質が若干私好みではないものの、若々しく力強さに溢れた堂々たる歌唱で、感心した。
しかも、なんとプレミエの8日前(だったかな?)になって当初出演者がキャンセルしてしまい、イーメルは代役として急遽出演が決まったのだという。
 
これまでアエネアス役をまったく歌ったことがない人が、一から覚えて8日間でモノにするなんてことは、まず不可能だと思う。(厄介なフランス語だしね。)イーメルは、きっと以前にどこかの歌劇場で歌った経験があるのだろう。
例えそうだったとしても、この作品は長大だし、演技もしなければならないし、デュエットだってあるし、かなり大変だったはず。それを見事にこなしたのはさすがと言っていいだろう。
 
終演後のカーテンコールでは、そんなイーメルに客席から大きなブラヴォーがかけられていた。
「急な代役にも関わらず、頑張った。よくやった。」というねぎらい。
これがまた実にメトらしい。
メトのお客さんはとにかく優しい。別の言い方をすると、「甘い」(笑)。
これがヨーロッパだと、特にイタリアだと、楽しみにしていたお目当ての歌手が落っこちると、その不満を代役にぶつけることがしばしば。
 
どっちがいいのかは・・・まあそれは判断する人によりけりということで・・・。