クラシック、オペラの粋を極める!

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思い出の読響

 実際に登場する回数はさておき、読響の指揮者陣はかなり錚々たる顔ぶれである。桂冠指揮者、名誉指揮者など、ちょっと多すぎる気がしないでもないが、それぞれのネームバリューなら国内のオケの中ではN響と双璧だろう。
 また、過去に客演した指揮者もビッグネームが名を連ねていて、このオケの歴史の1ページを刻んでいる。なんたって、‘あの’チェリビダッケが振ったことがあるのだ。これだけでも箔がつくってもんだし、伝統に彩りが添えられている。(チェリのリハーサルは、それはもう緊張感漂う厳しいものだったらしく、関係者間で伝説として語り継がれているようだ。)
 
 さて、私の「思い出の読響」として、数多くの中から以下の2公演をピックアップしてみたい。いずれもかなり昔のもので恐縮だが。
 
 まず一つは、1990年2月2日東京文化会館クルト・ザンデルリンクが振った定期演奏会。プログラムはベートーヴェン交響曲第1番とブラームス交響曲第1番。しぶ~い!でも、絶妙の選曲ですね。このコンサートが、私がこれまでに聞いた読響でダントツのナンバーワン。いまだにその時の美しい響きが耳に残って離れない。
 
 当時から読響は日本のトップクラスのオケと言われていたが、所詮は「日本の中で」の話だし、個人的にはイマイチ洗練されていないような印象をずっと持っていた。「なんか、わら半紙みたいな音だねー」などと偉そうによく影口を叩いていたものだ。(ひでえ例えだ。すみません。)
 
 そんな印象をザンデルリンクは一変させた。わら半紙から光沢のある上質紙へ。いや、紙ではなくシルクだったかもしれない。指揮者によって、音楽だけでなくオケの音色そのものが変わるということを初めて知った貴重な体験。それはまさしく衝撃的だった。あの時ザンデルリンクはいったい何をしたのだろう?リハにおける細かな音作りによるものなのか、それとも彼自身のオーラによるものなのか??当時の団員に是非聞いてみたいものである。
 
 
 もう一公演は、更に遡って1987年5月9日のロリン・マゼール客演のコンサート。同じく東京文化会館で、プログラムはマーラー交響曲第2番復活。
マゼール登場!!」
 広報宣伝の力の入れようはすごかった。確かにこれはこれで一つのビッグイベントであったことは間違いない。
 
 本公演で、マゼールはこれでもかとばかりオケを煽った。もちろんオーケストラも俄然ヒートアップした。さすがはマゼール、オーケストラの能力を最大限引き出して・・・と、ここまでは良かったのだが・・・引き出し過ぎて容量越え、オーバーフロー。風船が膨らみすぎてついに大破裂(笑)。その破綻ぶりがかえって面白く、逆に印象に残った。
 
 ところで、この曲は長大な第一楽章の後、少なくとも5分は休みを取るよう作曲者(マーラー)がスコア上で指示しているとのこと。でも、実演ではなかなかその通りにやらない。時折、その間に合唱団を入れたりしてつじつまを合わせるのを見かけることがある程度。
 
 マゼールはちゃんとこの指示に従った。指揮台の横にあらかじめ椅子を用意していて、第一楽章が終わると指揮台から降り、その椅子にちょこんと腰掛けて5分休憩した。わずか5分とはいえ、なんかびみょーな時間帯で、「これ、意味があるのかなあ」と首をかしげてしまった。そんなエピソードを含めて、忘れられない公演だ。