指揮 下野竜也
吉田浩之(テノール)
合唱 新国立劇場合唱団
池辺晋一郎 多年生のためのプレリュード
500回という節目の公演に何をやるかというのは、きっと楽団内でもいろいろな案や意見が出たと思うし、それに相応しい曲もいくつかあるが、そんな中から記念委嘱作品とリストのファウスト交響曲というのは、さすが読響、かなりあっぱれなプログラムだ。「へえー、そうきたか!やるねー」って感じである。リスト生誕200年の記念を兼ねているというのもなかなかオツだし、こういうなかなか上演される機会がない名曲を採り上げること自体が、まさにこのオーケストラの意欲と信念を強く表していると言えよう。
もともと読響は企画力に優れたオーケストラだ。今でこそ在京オーケストラは、どこも多角的なアイデアで勝負しながらしのぎを削っているが、読響はその先駆け的存在であった。団内にアイデアマンがいるのかもしれないし、比較的恵まれた財政基盤のおかげで躊躇なく野心的なプログラミングが可能なのかもしれない。
ただ、これがもしスクロヴァさんあたりでブルックナーとか第9とかミサ・ソレのようなプログラムだったら間違いなく完売になったのに、下野さんで、しかもマイナーなファウスト交響曲ではねえ・・。残念ながら満席にはならない。仕方ないやね。
肝心の演奏であるが、記念公演らしく、指揮者の気合とオーケストラの気合の両方が感じられる本当に立派なものだった。下野さんは、いつもの通りマジメにカッチリとタクトを振ってオーケストラを牽引していた。いつも思うことだが、こんなに分かりやすい指揮者は他にいないのではないだろうか?
一曲目の委嘱作品、先日の東フィルみたいにまたお化け屋敷のBGMだったらどうしようと冷や冷やしたが、映画音楽やNHK大河ドラマ主題曲なども書く池辺先生らしい分かりやすい曲で、なかなか良かった。ちゃんとリズムがあり、ちゃんとメロディーがあるというそれだけで、私は思わず拍手してしまいました(笑)。
この曲のクライマックスは、なんだかマーラーの復活に似ている気がする。合唱やソロ歌手、オルガンが加わって壮麗に鳴り響き、見事に盛り上がる。ブラヴォーも多数飛び出し、盛大な拍手に包まれたカーテンコールは、演奏面と500回記念の両方に対する賞賛であるに違いない。おめでとうございました。