でも冷静に考えれば、オペラハウスではなくオーケストラだと、ウィーン・フィルは音楽監督を置かないし、ベルリン・フィルやコンセルトヘボウなどは現時点でポストが埋まっているし、これらと同等の世界トップクラスオーケストラであるシカゴ響は、ムーティにとってまさに適所であったのかもしれない。
シカゴ響は、ショルティ時代は栄華を極め、コンサートはいつも盛況だったという。チケットは会員で占められ、一般入手はかなり困難だったらしい。
ところが次のバレンボイムに移ると、人気がやや陰ったとのこと。現在のバレンボイムの実力と世界における立ち位置からするとにわかに信じられないが、シカゴはより一層華やかなスター指揮者を待望していたのだろう。このたびクラシック界の‘皇帝’を迎え、「栄光よ、もう一度」というのが関係者、ファン共々の率直な気持ちに違いない。そしてその成果は、シカゴだけでなく世界中の音楽ファンが注目することになる。
ムーティを信奉している私も、もちろんその中の一人。もう、早く聴きたくてしようがない。
来日してくれればそれに越したことはないし、いずれは来るだろうが、その時期は未定だし、となると現地に行ってみたい衝動に駆られる。
実は、私はまだシカゴに行ったことがないんだ。アメリカ三大歌劇場の一つリリックオペラもあるし、漠然と「行きたいなあ、いつかは行かなきゃなあ」と思っていたが、ムーティの着任で「行きたいなあ」ではなくて「行かねばならない!」に変わった。しかも「なるべく早く!」
ということで、来月のシカゴ行きが決まった。ちょうど同時期、リリックでローエングリンと西部の娘をやっていたのも良かった。
シカゴ響は二公演。プログラムは次のとおり。
2月10日 チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲(独奏:V・レーピン)
現代曲(委嘱作品)
当初は8日の公演は聴かない予定だったが、休暇を増やせることになったので、急遽旅程を変更し、二公演聴くことにした。
また、10日のプログラムは、もともとはヒンデミットではなくてブラームス交響曲第3番だった。チケットを買った後、曲が変更になった。つい最近たまたまシカゴ響のHPを覗いたら変更ということになっていて、その時は目が点になり、そして絶句した。
運良く事前に変更を知ったから良かったが、もし知らずにそのまま現地入りしてコンサート当日にこの事実を知ったら、私は相当ショックを受けたハズである。なぜなら、私はこの曲を知らなかったのだから。
「知ってるよ」というお方、あなたは相当のクラシック通です。普通、知らねえよなー。
これもまた、たまたまであるが、私はこの曲のCDを持っていた。この曲を聞こうと思って買ったのではなく、アルバムの中に入っていただけ。なので、耳にしてはいるものの、記憶に留まっていないし、そういうのは「知らない曲」と言わねばなるまい。
で、改めて恐る恐る聴いてみると・・・これがなかなかいい曲である。いかにもヒンデミットらしい曲だ。ブラスセクションが活躍してかっこいい。ただ、やはりちょっと上級者向けかもしれない。
マエストロは何でまたこんなマイナーな曲を選んだのだろうか??過去にやったことがあるのだろうか?それとも初めて?謎である。
ムーティ&シカゴ響は今年の8月、ザルツブルク音楽祭に招かれている。今回のショスタコーヴィチとヒンデミットは、そこでも披露されることになっている。ということは、やはり確信に満ちた選曲ということなのだろう。そういうことなら、ますます楽しみだ。