2010年10月30日 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス サントリーホール
合唱 アーノルド・シェーンベルク合唱団
生の演奏、生の音楽に接することが出来る、そのこと自体が貴重な経験であり、「ひょっとすると、これが最後、もう今後ないかもしれない」という絶好の機会だというのに、客席はガラガラ・・・。唖然愕然。
最初は、台風の影響で行くことを断念してしまったお客さんが多いのかな、と思ったが、エリアまるごと空席状態があったということは、やっぱり売れ残りが相当あったということだ。
いったいどういうことなんだろう??
アーノンクールに匹敵するような骨董的価値を有する老巨匠指揮者は、私はあと、ブーレーズくらいしか思い浮かばない。もちろんハイティンク、アバド、スクロヴァチェフスキ、プレートル、ブロムシュテットなどいるが、アーノンクールに匹敵するとはとても思えない。
要するに、景気が悪くて、大枚はたいてでも足を運ぶお客さんが減っているということなのだろうか・・・。
「行きたいのはやまやまだけど、高いチケット代を払えないよ」という人にも、今回は、今回だけは無理をしてでも聴いて欲しかった。それくらい、次元を超えた演奏だった。アーノンクールの演奏は確かに癖があり、独特のアクセントのつけ方が鼻に付いて好きになれないという人もいるかもしれない。私もそういう意味で言えば、決して好みではない。
だが、「好み」の問題を超えている。これは誰もまねをすることが出来ない、「アーノンクール」という唯一無二で、間違いなく演奏史の一編を飾る絶対的存在価値の音楽なのだ。
私はかなり感傷的な気持ちで聴いていた。
「ああ、本当にもう最後なのかなあ。嘘だと言ってくれアーノンクール。まだまだ元気じゃないか、アーノンクール。また来てくれよ、アーノンクール。でも本当に最後だというのなら、あなたの雄姿はしっかりまぶたに焼き付けようではありませんか。」
とか言いながら、ふと気がつくと、歌もお姿も表情もとぉっっってもチャーミングなソプラノ、ドロテア・レシュマンをついつい眺めてしまって「あ、いかんいかんっ」と我に返ることを繰り返していたのであったが(笑)。