タイトルのとおり、19年もの長きに渡ってウィーン国立歌劇場に君臨した総監督ホーレンダーのご勇退記念ガラ・コンサート。2010年6月の公演の中継。世界最高の歌劇場のドンだけあって、いやはやその出演者の綺羅星のごとく豪華絢爛なこと!
ソロ歌手は・・・いったい何人出たのだろう・・・40人くらい??わからん。ざっと挙げてみよう。男性はドミンゴ(指揮もしました)、ハンプソン、フルラネット、キーンリーサイド、ヌッチ、ザイフェルト、シュトルックマン、ボータ、ヴァルガス、今回アーノンクールと一緒に来日したシャーデ、etc・・・。女性はフリットリ、ネトレプコ、ポラスキー、ピエチョンカ、マイヤー、イゾコスキ、ウルマーナ、デノケ、デセイ、ダムラウ、キルヒシュラガー、etc・・・。
いや~本当にすごいメンバー。
肝心のホーレンダーさんは、貴賓席でゆっくりご観覧かと思いきや、ステージ脇に控えてコンサートのホスト役を務めていた。
ところで、実に興味深いことがある。
ウィーン国立歌劇場は世界最高の歌劇場なのだから世界最高の歌手が集まるのは当然なのだが、そんな中でも、あたかも「ファミリー」とも言えるような、「特にウィーンで気に入られている歌手」がいる、ということ。
その一方で、必ずしも、誰もが「世界最高」として認め、各地で絶賛されているというほどではないのだが、ウィーンでは常連として名を連ね、出演回数が多く、確固たる地位基盤を築いている人たちがいる。
今回のガラ・コンサートでもあたかも当然の顔をして出演していた以下の人たちが、そうである。
ボアス・ダニエル、アドリアン・エレド、ソイレ・イゾコスキ、クラッシミーラ・ストヤノヴァ、ナデア・クラステヴァ、ゲニア・キューマイヤー。みなさん御存知ですか??
さて、気に入られている御用達歌手たちがいる一方で、その逆で、世界のどこでも大活躍して、人気実力共に申し分ないにもかかわらず、なぜかウィーンでは“その割には”(※)出演回数が多くない人たちもいる。
(※その割には、というのを強調します。決してまるっきり出演していないという意味ではありません)
今回のコンサートにもやっぱり出演していない以下の人たちが、そうである。
フレミングは、メトの看板スター、ナンバーワン、プリマ・ドンナなのに、まさに「その割には」って感じ。ヨナス・カウフマンなんかは、あまりにもオファーがたくさん来て引っ張りだこなので、天下のウィーンと言えどもそう簡単にスケジュールが入らないのかもしれない。
今回のコンサートについて、話を戻す。
スター歌手が織り成す華やかなオペラアリアの数々は、どれもこれも素晴らしくて楽しかったのだが、数ある中で私の心に最も染み入ったのが、アンゲラ・デノケとステファン・グールドのデュエットによるコルンゴルトの歌劇「死の都」から、マリエッタとパウルの二重唱だった。
「日本にまだ一度も来たことがない最後の大物歌手」と断言してしまおう、アンゲラ・デノケ。私は彼女が大好きだ。声はビロードのようになめらかでしっとりしているが、音楽自体は芯があり、骨太である。表情も豊かで、完全に役と同化する。
デノケさん、日本に来てくださいよ。お願いします。コンサートエージェンシーのどなたか、彼女を呼んでくださいな、是非。
今回のガラ・コンサート、NHKでは昨晩のハイヴィジョンでの放映の他に、普通のBSでも今後放送される予定だそうなので、ご覧になっていない方は是非チェックしてみてください。