クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2017/6/3 日本フィル(山田和樹マーラーチクルス)

2017年6月3日   日本フィルハーモニー交響楽団   オーチャードホール
指揮  山田和樹
合唱  武蔵野合唱団、栗友会合唱団、東京少年少女合唱隊
林正子(ソプラノ)、田崎尚美(ソプラノ)、小林沙羅(ソプラノ)、清水華澄(メゾ・ソプラノ)、高橋華子(メゾ・ソプラノ)、西村悟(テノール)、小森輝彦(バリトン)、妻屋秀和(バス)
マーラー  交響曲第8番 千人の交響曲
 
 
思わず立ちすくむほどの特大ステージ。何段にも連なる合唱のひな壇。
壮観な景色。見ただけでただならぬ雰囲気が伝わってくる。
マーラーの「千人」は、どこのオーケストラであっても、どの指揮者であっても、常にスペシャルな一大公演。クラシック音楽の祭典イベントだ。このワクワク感、高揚感は「千人」ならでは。
 
正指揮者とはいえ、まだ若手の山田和樹に全曲チクルス、そして「千人」の祭典を託されたのは、それだけ期待が込められているからだろう。また、それだけのことを成し遂げられる力を持っていると認められているからだろう。
 
包容力。
マラ8の演奏を聴き、その山田和樹の音楽を表そうとしたら、この言葉が浮かんだ。
言うまでもなくこの作品は巨大。スケールにおいて、空前絶後と言っていい。
山田和樹は、そんな巨大さを包み込む懐を持っている。どんなに大きく響いても、音量で制圧するのではなく、勢いや感情に任せることなく、あくまでも音楽として処理している。仕上がりは実に丹念。
これは率直に驚嘆すべきことだ。
 
特に合唱の響きがクリアで、これは東京混声合唱団の音楽監督を務めているキャリアがモノを言っているような気がする。(もちろん合唱の功績というのは、それぞれの合唱団指揮者による鍛錬の賜物なのは、百も承知だが。)
 
その合唱団。暗譜で歌い通した渾身の力演に、最大限の拍手を。
全体の見た目では分からないが、ステージには二つの団体が乗っている。「一団体は暗譜、もう一方は譜面片手」は許されない。偶然はあり得なく、両団体による合意形成があったはずだが、簡単に「暗譜」と言っても、その準備がどれほど大変であるか、私にはよーく分かる。
 
ところで話は変わるが、私の一列前に、まるで見守るかのように、成功を祈るかのように、手を固く握りながらステージを見つめていた30代(と思われる)女性が座っていた。時折オペラグラスで一所懸命覗き込む姿は、真剣そのものだった。
彼女は東京少年少女合唱隊に出演しているお子さんのお母さんだろう。カーテンコールで合唱隊が起立すると、拍手の量を40%増しにしていたから、まず間違いない。
 
子供たちの頑張りの影に、必ずやお母さんたちの賢明な支えがある。
指揮者に対して「包容力を感じた」と上に書いたが、こんな身近なところにも包容力をみつけることが出来た。その包容力は音楽的にヤマカズさんほど大きくはなかったかもしれないが、とても優しかったし、お姿はなんだかとても美しかった。