成田では、米国テロ未遂事件の影響で、アメリカに向かう飛行機の搭乗口付近で身体検査を実施していた。さすがに物々しく、時間もかかったが、無事にパス。
いつものエールフランス利用だったら、出発までの間、ラウンジでくつろぐことが出来るのだが、今回は全日空のため、私の扱いは単なる一般エコノミー利用者。所持しているゴールドカードは全くの無威力。残念っ!(いかん、やっぱりAFに未練がある)
長い機内の時間を過ごし、若干の遅れ程度でNYに到着。
ご無沙汰のNY。
しばらく来ない間に、JFK空港からマンハッタンまでのアクセスに選択肢が増えていた。昔は、早いけど高いタクシーか、それとも安いけど時間がかかる地下鉄、あるいは乗り合いシャトルバスしかなかったのだが、今や‘エアートレイン’なるモノレールみたいな空港内循環シャトルが郊外路線駅であるジャマイカ駅まで延びた結果、「早くて安い」アクセスを確保出来るようになった。約50分でマンハッタン中央部へ到着。これは便利だ。
お昼頃にホテルに到着。午後3時のチェックインタイムまで部屋に入れないとのことだったので、荷物を置いてさっそく観光に繰り出した。
天気は晴れ。寒いが、凍えるほどではない。
おお!ニューヨーク!懐かしい!林立する高層ビル、様々な肌の色の雑踏、イエローキャブ、誇らしげにあちこちにはためく星条旗フラッグ・・・。
まず最初に訪れたのはノイエギャラリー。ノイエ=「新しい」という意味のドイツ語のとおり、クリムトやココシュカ、E・シーレなどのドイツオーストリア作品を所蔵している。
アメリカを訪れて最初の観光目的地がドイツオーストリア系の美術館というのもなんだかなあ、と思ったが、見たい絵があるのだからしようがない。
その見たかった絵とは、上のクリムト作「アデーレ・ブロッホバウアー機廖
美術館はこの絵を購入するために、当時およそ160億円を払ったという。現在のレートだともう少し安いが、いずれにしてもやっぱりNYは金持ちだ。
この絵を見るのは念願だった。まずは大満足。本格的なウィンナーコーヒーやトルテを堪能することが出来る美術館の併設カフェ(結構有名だそうで、混んでいた)で軽い昼食を取った後、いよいよ本日の観光の目玉、メトロポリタンオペラハウスのバックステージツアーへ向かった。
ウィーン、ミュンヘン、パリ、ドレスデンなど、ガイド付きによる劇場案内ツアーを催している歌劇場は世界にいくつもあるが、私の知っている限りにおいて、メトのそれは群を抜いて「最高!」である。
何が最高かというと、まさに文字通り「バック」を見せてくれるのだ。ステージ裏、大道具・小道具、衣装部屋(それぞれ、職人さんが作業をしている)、ソリストの控え室、そして、何と、現に行われているリハーサルや練習をドア越しに覗くことができるのだ!(上記の写真はツアーに集合しているところ。撮影厳禁により、様子を写真でご紹介できないのが残念です。)
今回が二度目の参加だったが、9年前の前回、衣装部屋に連れて行かれてそこでグルベローヴァの名札が付いたツェルビネッタの衣装を発見した時は思わずのけ反り、声を上げてしまった。「Don't touch」だったが、そっとさすってしまった。誰も見ていなければ、私はぺろぺろと舐め回したことだろう(変態)。
今回も前回と同様、お宝のような小道具、役名や歌手名の名札が付く衣装などにため息を付き、目を爛々と輝かせる。
歌手の控え室では、R・アラーニャの私物(名前が書いてあった)の空気清浄機を発見。すげー。
また、リハーサル室の前では、ガイドの説明そっちのけで、部屋の中で行われている練習を覗き込む。知っている歌手はいないかなー、なんて思っていたその瞬間、見たことのある女性歌手が颯爽と登場し、リハーサル室に入っていった。
「アレ?今のひょっとして、A・ピエチョンカ??」
その時は自信が持てなかったが、1週間後にシモン・ボッカネグラのアメーリア役で出演予定であることが後で判明。間違いなかろう。
ステージ裏では、その日の晩に予定されているトゥーランドットの装置だけでなく、カルメンやばらの騎士などのセットも無造作に置かれていて、これまた大興奮。いやーすげー。
一通りツアーが終わったところで、ガイドさんがなぜか私に話しかけてきた。
「在住の方ですか?旅行の方ですか?」 「旅行です」
「今回、オペラを何か観ますか?」 「イエースオフコース! カルメン、バラの騎士、トゥーランドットを見ます!(どうだまいったか)」
「Oh!! それは素晴らしい。特にカルメンは新演出で、圧倒的な評価を得ましたよ。絶対にいいと思います。」
ほっほう。それはそれは。ありがとうございます。本当に楽しみでございます。
本日の観光はここまで。ホテルに戻ってチェックインし、しばし休憩。夜はマディソン・スクエア・ガーデンでNBAバスケ観戦。
スポーツ観戦はいい。何がいいって、騒げるので睡魔に襲われない。これがオペラだったら、初日の夜はほ~んと大変なんだから。
鑑賞記、ではなく観戦記は次回に。