ウィーン二日目。
最初に訪れたのは、ウィーンの定番観光スポット、シェーンブルン宮殿。
私自身が既に何度も訪れていたとしても、ウィーン初めてのお連れ様がいらっしゃる場合は、必ずここに御案内する。そうしなければならない。それくらいの定番観光スポット、シェーンブルン宮殿。
続いて、セセッションと呼ばれるウィーン分離派会館。
ここは、グスタフ・クリムト作の「ベートーヴェン・フリーズ」が常設展示されていることで有名だ。
このベートーヴェン・フリーズ、昨年に開催されたクリムト展でレプリカが来日した。ご覧になった方もいらっしゃろう。私も当然行った。
さすがに本物は建物の壁に描かれているので持って来られないが、レプリカは本物と見紛うくらいに精巧だった。しかも近接で観られたのは大きい。現地では壁に描かれている分、高さがあり、遠い。
この作品、ベートーヴェンの交響曲第9番、いわゆる「第9」をイメージして作られたことで知られる。
実際の絵を見ると、あの「第9」の曲想からは程遠く、イメージとのギャップが生じる。ウィーンで初出展された時の世評も芳しくなく、私も初めて見た時は「これのいったいどこが第9なの?」と戸惑ったものだ。
だが、今となっては、「さすがはクリムト、これぞクリムト」と感嘆することが出来る。
つまり、これは芸術家の際限のない想像力の賜物だ。
この想像力は、オペラの現代演出における欧州の演出家のイメージの膨らませ方によく似ていると思う。
見えたとおり、聞こえたとおりのイメージに当てはめるのではなく、そこからいかに飛躍させるか。そこに、いかに自分のオリジナリティを加えられるか。
つまり、我々はまさに鑑賞力を試されているようなものなのだ。
この後我々は、クリムトのコレクションとして世界最大級を誇るベルヴェデーレ宮殿上宮のオーストリア・ギャラリーを訪れ、まさにクリムトの世界、ウィーン世紀末における頽廃芸術の精美に触れたのであった。