2009年11月23日 チェコフィルハーモニー管弦楽団 サントリーホール
指揮 ヘルベルト・ブロムシュテッド
ブルックナー 交響曲第8番(ハース版)
いかにもブロムシュテッドらしい、端正かつスマート、そしてあくまでも自然体のブルックナーだ。
立ち止まらず、いつもどおりヒュンヒュンと指揮棒を振りながら、音楽がトントンと前に進んでいく。チェリビダッケやヴァントのような巨匠を崇拝し、神々しさを追い求め、ひたすら重々しいテンポに人生の奥深さを見出そうとするブルックナーファンはこの演奏をどう聴いただろうか。
もちろん、神懸かった場面もちゃんとあった。第3楽章のアダージョの美しさは比類無いものであった。チェコフィルの弦楽器と木管楽器の水準の高さが如実に示されていた。
個人的に、ブル8は思い出深い大切な曲だ。大学時代に所属していたオーケストラでこの曲に取り組んだ。青春の全てを注ぎ、全身全霊を込めて演奏した。演奏終了後は脱力で無になった。燃え尽きて真っ白になった。
今でもこの曲を聴きながら、ヴァイオリンの旋律を心の中で呟き、左手の運指が自然に動く。
ブルックナー交響曲第8番。
巨大にそびえ立った曲、一期一会の公演、それを聴く貴重な時間-私にとって全てが「特別」だ。もちろん、80歳を越えるブロムシュテッドも、音楽自体は淡々としていたが、「特別」にふさわしい巨匠であることは間違いない。熱烈なカーテンコールの拍手がそれを物語っていた。