2009年11月22日 二期会・日生劇場共催オペラ 日生劇場
R・シュトラウス カプリッチョ
指揮 沼尻竜典
演出 ジョエル・ローエルス
管弦楽 東京シティフィルハーモニック管弦楽団
佐々木典子(伯爵令嬢マドレーヌ)、初鹿野剛(伯爵)、望月哲也(フラマン)、石崎秀和(オリヴィエ)、米谷毅彦(ラ・ロシュ)、加納悦子(クレーロン) 他
演出家が何をやりたいかはよく分かった。また、演出家が作品を通じて自らが考えた主張を織り込むことについても理解する。
シュトラウスが作曲していた時代とナチズムとの関係。
カプリッチョの最初の共同製作者であるユダヤ人の台本作家シュテファン・ツヴァイクがナチによって追われたこと。
「カプリッチョという作品には以上のような背景が存在し、これを無視するわけにはいかない。カプリッチョという作品を通して時代そのものを映し出さなければならない。」
以上の演出家の主張によって、作品はがらりと変容した。
「言葉なのか音なのか、オリヴィエなのかフラマンなのか」という単なる論議は片隅に追いやられた。
その結果、最後のシーン、有名な月光の音楽とマドレーヌのモノローグの場面のシュトラウスの音楽から、美しさと憂いが消えた。残ったのは悲しい哀しい響きだ。
それは、個人的には寂しいものだった。また、歌詞(字幕の対訳)との乖離が見られたために、決して居心地がいいものではなかった。
一方で、演出家が作品を真摯に見つめ直した結果の主張であるならば、それは否定せずに受け止めようとも思った。こういうのもあり、ということだ。ただし、またもう一度観たいとは思わないが。
沼尻指揮の音楽は賞賛に値する。この人のオペラはハズレがない。これだけ力があるのだから、ここは一つ日本を飛び出して、海外に挑戦したらどうか。そう、まさに大野さんのように。いいではないか、最初は小さな町の小さな劇場だって。のし上がっていけばいいのだから。
二期会の歌手も立派。ドイツ語お上手。皆さん、ドイツで勉強してきたキャリアを持っているのでしょうね。もちろん、ウィーンのスタジオにいた佐々木さんを筆頭に。
なにはともあれ、シュトラウスファンとして、このなかなか上演されない隠れた名曲を採り上げてくれて感謝です。