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2017/5/19 読響

2017年5月19日   読売日本交響楽団   東京芸術劇場
ブルックナー  交響曲第5番(シャルク版)
 
 
シャルク版というのがこの公演のミソ。私も噂で存在は知っていたが、実際に聴くのは初めてである。
てか、実演聴いたことある人っているのだろうか。録音だって、公式にはクナッパーツブッシュ盤しかないとのことだし。
 
ロジェ・ヴェン、うまくやったよな。本当ならブルックナー演奏で圧倒的な支持を得ていたスクロヴァチェフスキが振るはずだった。落胆する多くの信者に「なぬ?そうきたか!それやるか!」と思わせ、再び注目を集めさせるとは、さすが抜け目がない爺。
 
そのシャルク版であるが、やはり「原典版」と比べると、随分と書き換えちゃっている違和感がある。もはや別物と言ってもいいかもしれない。ティンパニーの扱い方にはクドさを感じるし、ラストの金管の増強は、思わず笑ってしまった。
こういう場合、ややもすれば拒絶反応が起こりかねないが、そうした感情が湧かなかったのは、決して異端扱いせず、作品を真摯に掘り下げ、真面目に取り組んだ成果が演奏的に秀逸だったからだろう。
 
実際、演奏は素晴らしかった。長大な作品だがオーケストラの集中度合いが高く、弛れることなく緊迫感に包まれたスリリングな演奏だった。
 
これはやはり名誉指揮者ロジェストヴェンスキーの功労であろうか。
 
かなり久しぶりに見たマエストロは、随分と年を取られた。
だが、その枯れた指揮ぶりは、いかにも巨匠然としていて、むしろ崇高な佇まいだった。
テンポは遅く、恐ろしく遅く、その遅さゆえにかえって奥行き感が広がり、神秘性が漂った。響きは昇華し、宇宙に解き放たれるかのようだった。
 
まるで、あの指揮者を彷彿とさせた。チェリビダッケだ。
初めて聴いたブル5は私の場合チェリだったのだが、「遅っせー」と思いつつ、ただならぬ雰囲気にぞくぞくしながら聴いていたものだった。30年前を思い出した。
 
案の定、聴衆は熱狂。
ほくそ笑むロジェ・ヴェン。まさにしてやったり。
(前日と同じ結びじゃんかよ)