2025年10月5日 東京都交響楽団 東京芸術劇場
指揮 ヨーン・ストルゴーズ
ヴェロニカ・エーベルレ(ヴァイオリン)
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
シベリウス 交響曲第3番
シベ3を聴くのが当初の自分の動機だったが、結果としてコンチェルトのカデンツァが公演の印象を全部持って行ってしまうのではないかなと、なんとなく事前に想像していた。
案の定そうなった。
エーベルレのソロは実に素敵だった。音に芯があり、しっかりとした技術もあって、魅了された。
でも、それよりイェルク・ヴィトマン作曲によるカデンツァが最大のポイントとなった。
ベートーヴェンの旋律をモチーフに据えつつ、現代の視点から自由に飛躍させた発展的なカデンツァ。ヴァイオリンだけでなく、ティンパニやコントラバスを加えたアンサンブル形式の採用は、観客の目と耳を楽しませた。さすがはマルチ・タレント:ヴィトマンの面目躍如である。
私自身はというと、大いに感心し、面白がりつつ、「ベートーヴェンを踏み台扱いにして、その先に行っちゃってるなー」という微妙な印象も拭えなかった。3つの楽章すべてで幅を利かせ、しかも長い。「カデンツァなんだからいいじゃん」と「カデンツァなら、何でもいいのか?」の狭間で気持ちが揺れ動く。
試み自体に異を唱えるつもりはないが、「聴き終えた後の印象の中にベートーヴェンもソリストもいなくなってしまう後味というのは、ちょっと如何なものか」と考えてしまった自分は、やっぱりコンサバなのだろうか・・・。
メインのシベ3。
この曲にはローカルな素朴さがあると思う。チャイコフスキーやドヴォルザーク、スメタナみたいな民謡っぽい旋律が郷愁を誘う。シベリウスは自然を想起させる作品が多いが、この曲はどこか人間っぽさ、田舎の人情みたいなのが漂っていて、妙に懐かしさを覚える。
そうした作品の特徴を最大限に引き出したのが、同郷指揮者のストルゴーズだ。
タクトは躍動し、音に豊かな表情を込めて、濃い音楽を作る。あまりシベリウスっぽくないのだが、説得力があるため、「なるほど、この曲はそういう曲なんだ」みたいに納得してしまった。
およそ1年ぶりの東京芸術劇場。設備改修のため休館していて、リニューアルオープンしたばかり。
ここのホール、音響を含め、クラシックファンからの評判が決して良いとは言えないのだが、私自身はそんなに悪くない、というか、意外と気に入っている。「前の人の頭が視界に入って気になる」とか「席の場所によってステージで見切りの部分が発生する」といったストレスが少ないのがいい。(ただし、座席の一部エリアにおいて「音響的に劣悪」の場所は存在する。)
駅からも近いし、住んでる埼玉からも近いし、食事するところもいっぱいあるし。
そういえば、何かの記事で「池袋は、埼玉県民が憧れの都会を目指して最初に辿り着く場所」みたいな紹介を見た気がするが、確かに、赤坂のホールに行くよりも、なぜか気持ち的にホッとするんだよな(笑)。