ピアノの祭典、世界最高峰のコンクールとして名高いショパン国際コンクールの本選が、ワルシャワで始まった。前回大会で、反田恭平が日本人として久しぶりに第2位に入賞し、大きな話題となったが、あれからあっという間に4年が経ったわけだ。
(※ ショパンコンクールは原則5年に1度、5・10の年に開催だが、前回はコロナ禍のため1年延期開催だった。今大会でまた元の5・10年開催に戻った。)
公式HPにて、予選を勝ち抜いた本選出場者84名(85名からイスラエル人一人が辞退)の国別出身と顔写真を見たのだが、思わず唖然、絶句してしまった。
アジア人、アジア人、アジア人・・・。
なにこれ?
数えてみた。
中国29人、台湾3人、日本13人、韓国3人。ベトナム系1人、マレーシア1人。
それと、国籍上は別の国(アメリカとかカナダとか)だけど実際は中国系、というのが8人。
これらを合計すると、58人。
84分の58。およそ70%がアジア人もしくはアジア系なのだ。
(そして、およそ二人に一人、半分弱が中国系)
こういう取り上げ方をすると、「アジア人(中国人)蔑視の目で見てるのか」とか指摘されるかもしれない。あるいは欧米人(白人)崇拝主義みたいな見方とか。
別にそういうつもりはない。ただ率直に「なにこれ?」と思う。だって、明らかに比率が偏っているではないか。
もしそれでも「出身国系を数えて『アジア人多い!』と指摘すること自体がそういう目で見てるんじゃないか??」と言うのなら、まあいい、勝手にそう思え。面倒くさいので、ムキになって反論しない。
私の頭に思い浮かぶのは、二つのことだ。
一つは、なぜこのようにアジア人が台頭し、欧米人が徐々に見当たらなくなっている時代になったのか、一体何が起こっているのか、ということ。
もう一つは、こういう事態を欧米の連中、特にワルシャワの人達は、本心の部分でどう思っているのだろうか、ということ。
人口の多いアジア圏が経済成長し、豊かになってきている。暮らしに余裕が出てきて、音楽を趣味にし、本格的にクラシック音楽を学び、楽器を演奏しようという人が増えてきている。そこから更に本場ヨーロッパを目指したり、演奏活動に勤しもうという人が次々と出てきている。その傾向が顕著になっている。
(本場から遠く離れたアジアから世界に進出し、知名度や活躍の場を得ていくためには、その手段としてコンクールを利用するのが一番手っ取り早い、という狙いもある。当然の思惑だと思う。)
一方、本場と言われるヨーロッパにおいては多様化社会が進行し、若者がクラシック音楽を選ばなくなってきた。クラシックのコンサートホールや歌劇場のロビーは、お年寄りで溢れている。
その構図が、コンクール出場勢力に現れているのではあるまいか。
もう一つ、向こうの連中はこれをどう思っているのか、ということについて。
眉をひそめる人は、少なからず、そして間違いなく、いるだろう。露骨に表には出さずとも。
まあ、表に出さなければ別にいいし、内心でそういう感情を抱いてしまうのは仕方がないというか、どうしようもないと思う。
一方で、国籍や出身についてまったく気にしない人も、きっとたくさんいるだろう。
なぜならば、出身がどこであれ、出場者は敬愛すべき音楽家・芸術家のタマゴだからだ。
多くのワルシャワの人たちは、こう思っているのではないか。
「自分たちの民族の誇りであるショパンを真剣に愛し、極めようとしている人がいる。そういう人達が世界中からここワルシャワに集っている。どこの国の人であれ、そんな若者を歓迎し、応援せずにはいられない。どうして眉をひそめなければならないのか?」と。