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2019/11/2 ワルシャワフィル

2019年11月2日   ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団   東京芸術劇場
指揮   アンドレイ・ボレイコ
ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)
モニュースコ   バリア序曲
ショパン   ピアノ協奏曲第2番、第1番


かわいそうなワルシャワフィル・・・。同情しますよ、ほんとうに。

せっかくの外来公演なわけですよ。しかも、ポーランドと日本の国交樹立100周年という記念公演でもあるわけですよ。
気合の一つも入りたくなるでしょうよ、普通は。
なのに、メインがピアノ協奏曲なわけですよ。伴奏なわけですよ。
しかも、ショパンの協奏曲って、そこらの音大附属高校の生徒でも書けそうなくらいヌルい管弦楽法で、プロオケ奏者にとっては悲しいくらい生易しい曲なわけですよ。

張り合いがねえ。せっかくなんだからいっちょマーラーやりてえ、ブルックナーやりてえ。
でもその望みは叶えられないんだな。

それもこれも、祖国を代表する作曲家がショパンだからだ。

この日の公演は完売。観客の7割は女性。ほとんどがブレハッチ目当てか、もしくは「本場のショパンを聴けるわね!」というピアノ好き。
「お! ワルシャワフィルか! そりゃ聴きに行かなきゃ!」なんて奴は、プログラムがプログラムなだけに絶対におらん。

オケの皆さん、ご愁傷さま。生まれてきたところが間違ったと思って、諦めたまえ。

何だったら、どさくさに紛れて、一曲目にペンデレツキとかルトスワフスキとかの小難しい曲やっちゃえばいいのに。まさかの誰も知らないモニュースコ。ま、別にいいけどさ。

さて、ブレハッチショパン。さすが同郷のピアニストだけあって、他のピアニストとは異なる興味深い特徴がある。
多くのピアニストが、ショパンの作品の中から「ショパン」なるものを見出そうとする。独特のルバートだったり、ポーランド風のリズムだったり、それらを自分なりに工夫して演奏しようとする。ショパンの作風を尊重しつつ、それを自分なりのテクニックに馴染ませ、エッセンスとして披露する。それがまるでショパン演奏のイロハのイだとばかりに。

ところが、ブレハッチの場合、そうしたこだわりが一切ないのである。時折り聴こえるショパニズムは、実に奥ゆかしく、さりげない。
同胞であるがゆえに、ことさら強調するまでもない、そんなことしなくても、自分には生まれながらにして備わっている、みたいな強い信念なのだろうか。

見かけは相変わらず穏やかな貴公子だが、私には彼の秘めた自信とプライドが垣間見えた演奏だった。