クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

反田恭平

ちょっと記事ネタのタイミングとしては遅れてしまい、若干今さら感があるが、先月に開催された第18回ショパン国際コンクールで、日本人二人が入賞した。

知名度抜群の老舗コンクール。かつてポリーニアシュケナージアルゲリッチツィメルマンなど、錚々たるピアニストがここから羽ばたいていった。
彼らのような一流演奏家を目指す世界中の若き俊英たちが集結し、しのぎを削る中、反田恭平さんが第2位、小林愛実さんが第4位という快挙。前回、前々回と入賞者が出なかっただけに、TVや新聞などの一般ニュースでも大きく採り上げられて、日本中がその栄冠に沸いたわけである。
特に反田さんの第2位入賞は、日本人として、あの内田光子氏以来51年ぶりというから、そりゃもう確かに大騒ぎになるのも分からないでもない。

一方で、ひねくれ者の私なんかは、つい嫌味な小言を呟いてしまう。
コンクールなんて、所詮は若手の登竜門。世界最高ピアニスト決定戦ではない。年齢制限なくナンバーワンを決めるオリンピックや世界選手権のメダリストとは違うのだよ、と。

もっとも、クラシック音楽界にはそうしたチャンピオンシップが無いのだから、こうした機会はある意味貴重なのかもしれないけどね。

いずれにしても、いつもの私なら、5年に1度開催される大会(今回はコロナの影響で6年ぶり)の入賞者が決まっても、「ふーん、それで?」みたいなぞんざいな扱いなのだが・・・何を隠そう今回の大会だけは注目していた。内緒にしてたけど(笑)。

理由は一つ。反田恭平くんが参戦したからだ。私は彼の才能に、可能性と将来性を見出していたのである。

初めて彼の演奏を聴いたのは、2015年9月、東京フィルのソリストとして。この時、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏した。
その大胆不敵なピアニズム、強烈なキャラを打ち出した、いわば‘ぶっ飛んだ’演奏に「うわっ、ついに日本人にこういうピアニストが現れたか!?」と、こっちもぶっ飛んだ。

その反田くんが、あの有名なコンクールに出場するという。私は睨んだ。
「彼なら、もしかしたら日本人初の優勝者になるかもしれないな」
彼が世界屈指のピアニストであるかどうかはさておき、天賦の才能の持ち主であることは間違いない。きっと通用するだろう。所詮は若手の登竜門コンテストなんだし、クラシック鑑賞歴ウン十年のオレが見込んだのだから(笑)。

結果は2位。
うーむ・・・。そうか、1位にならなかったか。
1位になったら「オレは最初から彼の才能を見抜き、優勝を予想していたけどね」などと嘯くつもりだったが、それは叶わなかったな。

もっとも、彼の場合、別に1位であっても2位であっても、キャリア的にどっちでも良かったのでは、とも思う。
なぜなら、反田恭平は「ショパン・コンクール入賞」という箔にすがらなくとも、もうとっくに活躍中の人気ピアニストだからだ。
それに、優勝してしまうと、最初のうちはどうしてもショパン演奏を求められる。
はっきり言うが、彼はショパン弾きではない。ショパンも弾けるが、チャイコもリストもシューマンベートーヴェンラヴェルも弾ける、オールラウンダーだ。

だから、コンクールなんか単なる踏み台にして、ゴーイングマイウェイで、独自のピアニズムを極めていってほしい。

ちなみにショパン・コンクールに入賞すると、なぜかどういうわけか、あたかも副賞であるかのごとく日本に招かれ、演奏会の場を提供される。
さっそく来年2月に「ショパン国際コンクール2021入賞者ガラ・コンサート」の開催が決定していて、もう出演者やプログラム、チケット発売概要まで発表されている。

しかし、その出演者の中に、反田恭平の名前はない。入賞者の中で、ただ一人ない。

いいぞ!反田恭平!
そうだそうだ! 我が道を行け!!