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2024/5/18 三つのオレンジへの恋

2024年5月18日   ブレーメン劇場
プロコフィエフ  三つのオレンジへの恋
指揮  サーシャ・ヤンケヴィッチ
演出  フランク・ヒルブリッヒ
井上秀則(王トレーフ)、イアン・スピネッティ(王子)、ナタリー・ミッテルバッハ(クラリーチェ)、クリストフ・ハインリッヒ(レアンドル)、ファビアン・ディベルク(トルファルディーノ)、ミカエル・パーチュカ(パンタロン)、ナディーヌ・レーナー(ファタ・モルガナ)   他

 

「三つのオレンジへの恋」の鑑賞については、苦い思い出がある。
2019年1月、同じくドイツのマンハイムの上演を観に行ったのだが、風邪で体調不良、最悪の状態で劇場入り。案の定、ほとんど目にも耳にも入らず、爆睡した。結局途中の休憩時にギブアップし、ホテルに戻ってしまったのだ。

私はプロコフィエフが好きだ。「三つのオレンジへの恋」も好きだ。
だが、ほとんど上演されないレア演目。
本公演は、プロコを鑑賞する貴重な機会であり、更には個人的なリベンジマッチでもあった。
新演出プレミエ、チクルス初日。ドイツ語上演。


最高に面白かった!!
音楽的なグレードというより、あたかも一つの演劇作品として、釘付けになるようなノリの良さ、テンポの良さ、舞台の明るさ。場面の作り方も巧妙。
まさに中小カンパニーならではのアンサンブルの緊密さ、そして総合的な演技力。
出演者はほとんどが劇場専属契約の人なので、やり慣れており、まとまっている。豪華な舞台装置は製作出来なくても、小道具と演技と発想・企画力で勝負し、ファンタジーの魅力あふれる舞台でお客さんを惹きつけた。

カーテンコールは、「ブラヴォー!」じゃない。
「ウォーー!!」「ピュー、ピュー」(口笛)である。
プレミエだと、大抵の場合、歌手たちには喝采が送られつつ、演出に対してはブーイングが混ざるというパターンが多いが、これほどカーテンコールに登場した演出チームに対する拍手が温かいのを、ほとんど見たことがない。
いやいや、大成功だねー。


指揮者のヤンケヴィッチはウクライナ出身。ストックホルムの王立歌劇場のアシスタント等で経験を積み、今年1月からブレーメン劇場のカペルマイスターに就任。33歳の若手だ。
プロコフィエフらしい弾けるような瞬発力と切れ味が、爽快。


出演キャストの中に見つけた日本人の井上さん。彼もまた当劇場の専属契約歌手。
ネットで調べてみたら、音大ではなく普通の大学を卒業、一般企業に就職し、渡米して商社の営業部長になった後、アメリカの音楽院に通い、歌手としてのキャリアをスタートさせたという。かなりの異色経歴。
でも、素晴らしいではないか。ヨーロッパで劇場巡りしていると、韓国勢に圧倒されっぱなしなので、こうして日本人が頑張っている姿を確認できたのは、良いことだ。


ところで、このブレーメン劇場。市立で、客席数は1000に満たない。
そんなローカル劇場が、15年くらい前だったと思うが、権威あるオペラ誌「オペルンヴェルトOpernwelt」によって「シアター・オブ・ザ・イヤー」に選定されたことがある。年間最優秀劇場ということ。大変栄誉ある受賞。
活きのいい演出家を登用し、次から次へと尖ったプロダクションを世に送り出して、評判になっていたのだ。

その後、まったく噂や評判を聞くことがなくなったので、すっかり停滞しているのかなーと思っていたが・・。
とんでもない。この日の上演を観る限り、どっこい、生きている。