クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/3/19 オペラ・コミック座

2024年3月19日   オペラ・コミック座
1 ストラヴィンスキー  プルチネッラ(バレエ全曲版)
2 ラヴェル  スペインの時
指揮  ルイ・ラングレ
演出  ギヨーム・ガリエンヌ
1 カミーユショパン(ソプラノ)、アベル・ザモーラ(テノール)、フランソワ・リス(バス)
2 ステファニー・ドゥストラック(コンセプシオン)、フィリップ・タルボ(トルケマダ)、ブノワ・ラミュー(ゴンザルヴェ)、ジャン・セバスティエン・ボウ(ラミロ)、ニコラ・カヴァリエ(ドン・イニーゴ・ゴメス)

 

かねがね行きたいと思い、その機会を伺っていたオペラ・コミック、ようやく初訪問、初鑑賞。

世間一般的には、どうしても世界に冠たるパリ・オペラ座の影に隠れてしまいがちだが、こちらコミック座も、同じく立派な国立劇場
ご覧あれ、この豪華なロビーの内装。ガルニエ宮に引けを取らんぜ。

スケジュールやラインナップを見渡しても、オッフェンバック、ラモー、リュリ、ドリーヴといったフランスのお国物や、グルックモンテヴェルディなどのバロック、その他なかなかお目にかからないマニアックな骨董的作品などが並び、目を引く。
ウィーンにおけるフォルクス・オーパーや、ベルリンにおけるコーミッシェ・オーパーなどともまた一味違う存在感で、キレのある上演がたびたび話題に上がる。フランスの伝統を固持しつつ、大衆性を打ち出し、更に革新的創造性を備える、ホットな劇場なのだ。

今回、そのような劇場で、めったに上演されないラヴェルの「スペインの時」を観られるのが嬉しい。何と言っても、この作品はここオペラ・コミックで初演されたのだ。


その前に、まずはプルチネッラ。よく聴く管弦楽組曲版ではなく、3人の独唱が加わるバレエ全曲版。
独唱については、オペラのように登場人物が物語上のセリフを歌うというものではなく、どちらかというと伴奏音楽の中の装飾扱い。今回の出演歌手にしても、ソプラノとテノールは劇場の座付契約の人だ。

舞台は、ダンサーが踊る本格的なバレエ形式。ただし、クラシカルというよりは、衣装など少しだけ現代チック。
評価や感想はちょっとパス。門外漢なので。ストラヴィンスキーを聴きました。


後半の「スペインの時」は、もちろんオペラ。いけない火遊びなんだけど、ちょっと洒落ていて、思わずクスッと笑える物語。ラテンのエスプリ満載。

それにしても、ラヴェルが書いた2つのオペラ。
方や「子供と魔法」は、子供も楽しめるファンタジックな寓話。そして「スペインの時」は、大人向けラブコメ。作曲の経緯や意図は分からないけど、上手く書き分け、並べたなと思う。


コンセプシオン役のS・ドゥストラックは、2021年7月、新国立劇場ビゼーカルメン」(大野和士指揮)にタイトル・ロールで出演し、日本のオペラファンにその名前を売った。
今回この「スペインの時」を鑑賞するにあたり、予習を兼ねて、2012年8月のグラインドボーン音楽祭の収録映像(放送からの録画)を観たのだが、彼女がコンセプシオンだった。
で、この公演の指揮が大野さんだったので、ドゥストラックの新国立カルメン起用は、こうした繋がりがあったからかもしれない。

そういうことで、ドゥストラック、コンセプシオンは既に自分のレパートリーに入っているし、しかもお国ものでフランス語だし、歌も演技も完全にお手のものという感じ。余裕と貫禄のステージだった。


指揮者ラングレの音楽は、会話劇であることを踏まえ、大仰に揺さぶるのではなく、テキパキと進行させる機敏さがとてもお上手。おそらく多くの観客が、ある意味音楽の存在を忘れ、物語に入り込んで、登場人物のやりとりに夢中になっていたのではなかろうか。何を隠そう私もそんな一人。オペラ指揮者の功績の中には、こういう陰ながらの支えというのも確実に存在すると思う。


それにしても、パリのお客さん、何だか演芸を観に来ているかのようなノリノリ反応。演奏中であろうが、よく笑う。オペラ特有のかしこまった雰囲気は無し。
コミック座のお客さんの一般的傾向なのか、それとも作品の洒脱さや演出がそうさせているのか。
いずれにしても、これぞ「コミック」。