クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

新世紀 パリ・オペラ座

Bunkamura ル・シネマで上映されている「新世紀 パリ・オペラ座」を観た。
ドキュメンタリー映画だが、オペラが好きで、劇場の舞台裏に興味があって、なおかつ、パリそしてパリ・オペラ座に行ったことがある自分のような人間にとって、たまらない作品だと思った。これは本当に面白かった。同じ趣味をお持ちの方に是非是非お薦めしたい。
 
我々は普段、上演というパフォーマンス、つまり最終の成果品だけを観ている。
だが、それは、様々な劇場関係者のまるで綱渡りのような仕事によって支えられている。しかも、物事は簡単に進まない。
それは、世界に冠たるパリ・オペラ座もまったく例外ではなく、同様・・・。
 
・・と書いて、ふと思った。
「いや、ていうか、パリだからこそ、パリであるが故に、余計な苦労が多いんじゃないの?」とね。
当たり前のことが当たり前に進まないこの国の厄介さをよく知っているからね。
 
とにかく、次から次へと襲いかかる難題。苦労の連続である。
 
バレエ部門芸術監督の退任(解任?)騒動。
演出サイド(演出家は、あのL・カステルッチ)と音楽サイド(指揮者や合唱団)との対立。
(オペラ制作過程で、常に起こりうる問題。F・ジョルダンは「この演出が本当に必要なのか?」と言い、視覚効果を重視する演出家が「これはコンサートじゃないんだ」と言うと、すかさず合唱責任者が「これはオペラだ!」と反論するやりとりが実に面白い。)
主要キャストのドタキャン騒動。
(これも常に起こりうる問題。)
人件費削減問題、チケット代の値上げ値下げ問題、パリを襲ったテロ事件・・・。
 
こうした問題、トラブルに、S・リスナー総裁が自ら率先して動き回り、事態収拾を図る。
大変だなあ、リスナー総裁。頑張っているなあ、リスナー総裁。
(でもなんだか、あえて総裁をヒーローとして演出している感がなくもない。)
 
マイスタージンガー上演の二日前に主役ザックス役のG・フィンリーが病気降板した際の、本人への出演説得や、代替歌手を世界中から探し出し、抜擢する事務方の奔走は、実に興味深かった。
フィンリー、ほんとふざけんなって。
 
上演を裏側で支え、指示を出すステージディレクターが、舞台上の歌手の歌に合わせて一緒に歌っているシーンは微笑ましかった。単なるお仕事を越えて、オペラという芸術を愛しているんだなあと感心した。
 
このドキュメンタリーの中で、一人のロシアの若者がオーディションで発掘され、育てられていく姿が捉えられている。その名をミハイル・ティモシェンコ。フランス語はまだ片言で、出演したB・ターフェルの歌唱をステージ袖から食い入るように見つめる姿は、まるでアカデミー生のよう。
しかし、彼は、パリ・オペラ座から見出された金の卵。
調べてみると、小さな役だが、もうオペラ座の実際の舞台に少しずつ立っている。これからどんどんと成長するにつれ、スター街道を歩むかもしれない。注目していこう。