クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2024/2/23 都響

2024年2月23日   東京都交響楽団   東京芸術劇場
指揮  エリアフ・インバル
マーラー  交響曲第10番 デリック・クック補筆版

 

都響とインバル、3回目のマーラー・チクルスに挑戦するんだって。
((((;゚Д゚))))

大丈夫? 最後まで持つの?
という心配はとりあえず置いておき、その一発目が、なんと、第10番クック版。
それから始めるか!?
まさか、10、9、8・・・と遡っていく?

まあいい。とにかく10番クック版である。
前回2014年7月、2回目チクルスの最後として採り上げたこの作品の鑑賞は、それはそれはもう、筆舌に尽くしがたい、超弩級の体験だった。

2014/7/20 都響 - クラシック、オペラの粋を極める! (hatenablog.com)

改めて読み返してみたが、我ながらの文章であるにも関わらず、並々ならぬ衝撃の大きさが蘇った。

で、10年の歳月を経て今回の公演になるわけだが、こういう時、「あの感動をもう一度!」などと渇望すると、大抵ろくなことはない。期待値が膨れ上がり、想像していたものとは異なる結果を目の当たりにして、「あれ? こんなだったっけ?? いや違うなー」となるのが、よくあるパターンなのだ。


昔と比較せず、今の自分が見つめたインバル&都響のマラ10は、やはり超一級の完成品だった。

作品そのものが蓄えるパワーが大きいというのもあるが、音楽は宇宙へと解き放たれ、終始一貫して透徹、峻厳に満ち、陰影に溢れていた。
都響の卓越した技術と集中力により、緊密度の高い演奏が繰り広げられ、聴衆は釘付けになった。

かつて、凄まじいほどの気迫で熱量を放出していた指揮者インバルは、今、大いなる思索をもって、この作品がいかに現代、この世と結び付くのかについて探ろうとしていた。


素晴らしい演奏だったが、だからといって10年前の超絶体験、「あの感動をもう一度!」を得ることが出来たのか、と言えば、それはやはりそうならない。

期待値が高かったから、ではない。
10年という年月の経過により、インバルの音楽性に変化が見えるのと同様に、聴き手である私も、音楽の受け止め方が変わってきているからだ。
懐の許容量は増した一方で、敏感さや感傷性といったものが、きっと薄まっている。
でも、要するにそれが人生ってやつだ。


この日は、ヴィオラの特任首席奏者、店村眞積さんのラスト・ステージだった。
読響、N響、水戸室内管、サイトウ・キネン、そして都響の首席を渡り歩いた、日本のヴィオラのレジェンド。
おそらく店村さんだって、これまでに数多くの伝説的な公演に身を置きながら、自身の音楽性の変化を受け止め、歳月をひしひしと実感しているのではないだろうか。