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2024/2/11 都響

2024年2月11日   東京都交響楽団   サントリーホール
指揮  エリアフ・インバル
ブラームス  大学祝典序曲
ベートーヴェン  交響曲第8番
ドヴォルザーク  交響曲第8番


小澤征爾、享年88歳。
晩年は、音楽活動はおろか歩行さえも難しく、ほぼ要介護状態。

エリアフ・インバル、現在87歳、2月16日で88歳。
方や現役バリバリ。指揮台までスタスタと元気に歩いて登場。腕をブンブン振りまくってオーケストラを操縦し、巨大な音楽を構築・・・。

この差・・・。
人によってまちまちの天寿。神様はいったいどのようなさじ加減で天命の配分を行っているのか・・・。


さて、私はもうかれこれ30年以上、インバルの音楽と向き合っている。
(カウントしたら、小澤征爾よりもずっと多く聴いている)
かつて、噴火するマグマ、ロケットの噴射のような疾風怒濤の音楽で、有無を言わせず聴衆を圧倒してきたインバル。
近年、老匠の域に差し掛かり、やはり少しずつ変化の兆しが見える気がする。

もっとも、そのように感じたのは、この日のプログラム、ブラームスベートーヴェンドヴォルザークという作曲家の特性、持ち味の影響というのが、多分にあるかもしれない。
だが、指揮者が作品を見つめるその視点の先に、しなやかな柔軟性や、シンプルな造形、みたいなものが、確かに感じられたのだ。

永年に渡って共演してきた都響との結びつきによって、相互信頼に基づく余裕が出来上がっているというのは、間違いなく大きいはず。以前のように、厳しく引っ張ったり、力強く扇動したりしない。演奏は、絶妙な阿吽の呼吸によって構築され、相変わらず音楽の懐は大きいが、その中にも節度があり、優しさと素朴さを湛えるようになっている。
達観の境地、インバル。円熟したな、と思う。


ただし、上にも書いたように、それはこういうプログラムだったから、ということも否定できない。

今月の都響定期演奏会では、さらにバーンスタインの「カディッシュ」、マーラー交響曲第10番といった、いかにもインバルの真価が発揮されるような大作が並ぶ。

残念ながら「カディッシュ」の公演には行けないのだが、マーラーで、今度はどのようなアプローチを繰り広げるのか。
ちなみに、前回2014年7月に演奏された同プロは、空前絶後、究極の演奏体験だった。
歳月を経て、どのような演奏になるのか、どのような印象を受けるのか。
めっちゃ楽しみ。