2024年2月17日 東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9
オッフェンバック 美しきエレーヌ(コンサート形式上演)
指揮 辻博之
台本・構成演出 佐藤美晴
管弦楽 ザ・オペラ・バンド
合唱 ザ・オペラ・クワイア
語り 土屋神葉
砂川涼子(エレーヌ)、工藤和真(パリス)、濱松孝行(メネラス)、晴雅彦(アガメムノン)、藤木大地(オレステス)、伊藤貴之(カルカス) 他
数あるオッフェンバック作品の中で、特に有名で上演の機会も多いのは、「ホフマン物語」であろう。それに続くのは「地獄のオルフェ」か。
だが、私が一番好きなのは、「美しきエレーヌ」だ。とにかく、全体を通して旋律が優しく、美しく、そして何と言っても楽しい。こんなにウキウキする曲は、そうはない。
この作品に出会ったのは、2003年。
12月にパリ・シャトレ座で行われた上演を現地鑑賞したのだが、これがもうとにかく悶絶級の絶品だった。
M・ミンコフスキー指揮、ルーヴル宮音楽隊の演奏。演出はロラン・ペリー。フェリシティ・ロットやローラン・ナウリなどが出演。収録映像にもなっており、ご覧になった方もいるかもしれない。
しかし、それ以後は鑑賞の機会がなく、ようやく20年ぶりに聴くことが出来た。本当に嬉しいかぎり。
今回は、いちおうコンサート形式上演だが、照明を駆使し、出演者は衣装を付け、ちょっとした演技も折り込む。
更に、物語を進行させる役目の「語り」として、役者さんを起用。ステージを盛り上げた。
オリジナルだと登場人物一人一人がセリフを語らなければならず、これだと歌手の負担となろう。妥協の産物でありながら、上演のコスパ的にもベストのアイデアだと思う。
こうした全体の構成を担ったのは、昨年10月、鈴木優人プロデュースオペラ「ジュリオ・チェーザレ」の上演を手掛け、コンサート形式オペラの一つの方向性を示した演出家:佐藤美晴さんだ。
一つ残念だったのは、多くの出演歌手が譜面台を使用し、楽譜を見ながら歌っていたため、どうしても演技が中途半端で、堅苦しくなってしまうことだった。
まあ、仕方がないといえば仕方がない。たったの1公演のみのコンサート形式上演で、暗譜による本格演技を求めるのは、無理な相談ということであろう。
歌手の中では、パリス役の工藤さんが好印象。
公演の顔にもなっているエレーヌ役の砂川さんは、悪いはずもなく、かといって特筆すべきという感じでもなく、いつもどおり。仕草が可愛い。ファンも多いと聞く。森麻季さんと同じく、見た目でも得をしている。
想像を越えて良かったのは、辻博之指揮のザ・オペラ・バンドと合唱のザ・オペラ・クワイアの演奏だったが、その「良かった」と思えた源泉が多分にオッフェンバックの音楽の功績という見方を、どうしても否定できない。彼らが素材の良さを最大限に引き出したということであれば、それなら大いに評価出来る。
もうね、とにかく作品。これに尽きる。「美しきエレーヌ」万歳。
さて。またミンコ&シャトレ座のDVD、見なくちゃ。