クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2016/12/9 東響

2016年12月9日   東京交響楽団   ミューザ川崎シンフォニーホール
モーツァルト  コシ・ファン・トゥッテ(コンサート形式上演)
指揮  ジョナサン・ノット
合唱  新国立劇場合唱団
トーマス・アレン(舞台監修、ドン・アルフォンソ)、ヴィクトリア・カミンスカイテ(フィオルディリージ)、マイテ・ボーモン(ドラベッラ)、ヴァレンティナ・ファルカス(デスピーナ)、アレク・シュレイダー(フェッランド)、マルクス・ヴェルバ(グリエルモ)


東響とN響のコンサート形式上演オペラ対決。公演日は重なっているが、二日あるのでうまく調整して是非とも両方を聴きたいところだ。
ところが残念なことに、二日目の明日は私は休日出勤。どちらかしか鑑賞すること出来ず、迷った末に東響にした。

プログラムに紹介されたノットのコメント。
「オペラの場合は(間にピットがあるので)歌手は客席から遠くに配置されるが、コンサート形式上演では、歌い手は目の前で一対一で話しかけるように歌うことができる。オーケストラと一丸となって聴衆に向かい合い、巻き込みながら一緒にコンサートを作るという特別な体験になる。」

この言葉どおりの公演だった。ノットの狙いは見事にハマったと言える。
歌手と客席の距離は、言うとおり近いが、同時に指揮者と歌手の距離も近い。半身になって振り返りながら歌手と息を合わせる指揮者ノットの音楽づくりが優しさに満ち溢れている。まるでオーケストラと歌手は家族で、彼らを包容する父親の愛情が滲み出るかのようだ。

小編成のオーケストラは、古楽奏法を巧みに取り入れつつ(一部オリジナル楽器を使用)、緻密なアンサンブルに徹する。爽やかで、優美で、繊細で、弾力性のある演奏。モーツァルトの演奏は、かくありたい。

歌手も同じだ。
一人ひとりの個性が飛び出てしまうのではなく、声楽アンサンブルとしてまとまっている。まるで、作品を引き立たせようと奉仕しているかのよう。これもすべて指揮者ノットの統率力と言えそうだ。
そんな中でも絶妙な味わいを出していたのが、グリエルモのヴェルバ。
若いがキャリア十分なだけあって、立ち振舞や歌い回しに貫禄を感じる。デスピーナのファルカスも良かったが、まあこれはデスピーナという役が良いんだよな。
トーマス・アレン、さすがに老けたが、ドン・アルフォンソはそんな今の彼に一番合っている役かもしれない。(海外で何度か彼が出演したオペラを観ているが、日本では何を隠そう初めて。)

素晴らしい公演だったが、さすがに埼玉県人にとって川崎で終演が午後10時を過ぎるというのは、ちょっと辛い。カーテンコールは申し訳ないがパスしてしまった。ゆっくり最後まで付き合って拍手を贈り、公演後に軽く一杯やって、そのままホテルに泊まっても良かったかも・・・。