2018年2月24日 東京芸術劇場コンサートオペラ
ビゼー 真珠採り
指揮 佐藤正浩
管弦楽 ザ・オペラ・バンド
合唱 国立音楽大学合唱団
鷲尾麻衣(レイラ)、ジョン・健・ヌッツォ(ナディール)、甲斐栄次郎(ズルガ)、妻屋秀和(ヌーラバッド)
真珠採りが本格的に上演されるのは、2005年のフェニーチェ歌劇場来日公演以来なはず。
こんなにもいい曲なのに。きれいで優しいメロディーメーカー、ビゼーの作品なのに。
第一幕のナディールとズルガの友情の二重唱なんか、すべてのオペラ作品の中でも屈指の名旋律だと思うけど。
バカみたいにカルメンばかりやってりゃいいってもんじゃないでしょうが。ねえ。
ジョン・健・ヌッツォ、久しぶりに聴いた。
ウィーン国立歌劇場やメトロポリタンオペラに出演し、活躍が期待される歌手だったが、覚醒剤所持で逮捕というしくじりをやってしまったのは、残念だった。あれさえなければ、もう少し違うステージにいたはずだろう。
昔も今も、彼の声は甘くて優しい。ビゼーの美しい音楽に相応しい。
ただし、ちょっと軽い。
なので、ドラマの起伏に時々埋没してしまう。
それから、今回どれほど勉強してきたかは知らないが、音符の捉え方が甘い箇所も目立ち、役として不完全な印象になってしまったのも残念。
その対極の印象をもたらしたのが、ズルガの甲斐さん。
ステージの姿を見ていると、いかにも譜面に頼っているように見えるし、見た目として役が滲み出てこない感じなのだが、音符の捉え方が的確なので、聞こえてくる歌唱は万全なのだ。演技ではなく、音楽で役を語っていた。さすがである。
レイラの鷲尾さんは、コンサート形式上演ではなく、そのまま舞台上演に出ても何の問題もないくらい、役を自分のものにしていた。
どういう団体なんだかよくわからないザ・オペラ・バンドは、まあ単なる伴奏というのなら、これで十分。それ以上でもそれ以下でもなし。
今回、照明の効果が素晴らしかった。きちんと音楽に合わせて明るさや色合いを調整していて、雰囲気作りに大いに貢献していた。