クラシック、オペラの粋を極める!

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2024/2/9 読響  小澤征爾氏の訃報に接し・・

2024年2月9日   読売日本交響楽団   サントリーホール
指揮  山田和樹
藤原道山(尺八)、友吉鶴心(琵琶)
バルトーク  弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
武満徹  ノヴェンバー・ステップス
ベートーヴェン  交響曲第2番

 

クラシックファンに衝撃と沈痛をもたらした「巨星墜つ」の悲報。
私はこれを、会場のお客さんと一緒に、壇上の山田和樹さんからのマイクによる発表で聞いた。休憩後のプログラム「ノヴェンバー・ステップス」演奏直前のことだった。
山田さんは、このノヴェンバー・ステップスの演奏を、「亡くなった小沢氏に捧げる」と静かに話し、そしてタクトを振り下ろした。

それにしても、なんということであろう。
このノヴェンバー・ステップス、初演の指揮者が小澤征爾だったのである。しかも、その初演となった公演では、プログラムにベートーヴェン交響曲第2番も入っていたというのである。

こんな運命的な偶然があろうか。
実際に氏が亡くなったのは3日前の2月6日だったとのことだが、その公表のタイミングは、まるで本公演に合わせたかのようではないか。
しかも、指揮者は日本のホープ、世界的な活躍で進境著しい山田和樹ときている。

天に召された巨匠から託されたバトンの引き継ぎ。
この日の聴衆は、期せずして、この厳粛な儀式に立ち会ってしまった。結果的に、そういうコンサートになってしまった・・・。


本当なら、演奏についてあーだこーだと感想を書き連ねるのだが、ちょっと止めとこう。驚きのニュースを耳にした瞬間、集中して音楽を聴こうという態勢が崩れてしまった。頭の中で自分の記憶に残っている小澤さんのことがぐるぐると巡ってしまい、鑑賞どころではなくなってしまった。こんな状態では、何を書いても空虚になってしまうから。


ノヴェンバー・ステップス演奏の後、山田和樹はタクトをすぐに降ろさなかった。目を閉じ、静謐な時間を作った。黙祷だった。ささやかながら、私も哀悼の意を捧げさせてもらった。