クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

アスミク・グリゴリアン

12月10日夜から11日にかけてNHKのBSP/BS4Kで放映された、ヴェルディマクベス」上演ライブ(2023年ザルツブルク音楽祭プロダクション)を見た。

現代演出の急先鋒ヴァルリコフスキによる演出は難解で、かなり厄介だったが、そうした演出の問題を軽く超越してしまうくらい、音楽の充実度が際立っていた。ソリスト歌手の歌唱も、指揮者P・ジョルダンが率いるウィーン・フィルも、ものすごい演奏だったと思う。

中でも抜群の存在感で光り輝いていたのが、マクベス夫人を歌い演じたソプラノ、アスミク・グリゴリアンだ。オーラ出まくっていて、彼女の登場シーンでは常に釘付けになった。見事としか言いようがない圧倒的な歌唱だった。

今や、完全にザルツブルク音楽祭の看板スターの一人である。
この世界最高級にして老舗のクラシック・フェスティバルでは、あたかも指定席のように毎年必ずお呼ばれされる常連音楽家がいて、例えば指揮者ならムーティバレンボイム、ピアニストならソコロフ、レヴィット、キーシンなどなど。いわゆる「大御所」、「スター」達なわけだが、なんと、既にグリゴリアンもその一員なのだ。

初出演は2017年だが、決定的に名声を轟かせたのが翌2018年に上演された「サロメ」のタイトルロールだろう。まさにセンセーショナル、大評判となり、以降、毎年出まくっている。つい先日、音楽祭は来年2024年のスケジュール、プログラムを発表したが、そこにも当然のごとく名を連ねている。プロコフィエフ「賭博者」のポリーナ役を務めるとのこと。

きっとザルツブルクのプロデューサーは、グリゴリアンのことを「自分たちが発見し、育て、花開かせたスター」だと完全に思い込んでいるのだろう。何だか、自慢の娘をショーケースに飾るしょーもない親、みたいに見えてしまうのであった。


日本にも昨年11月に初来日し、鮮烈な「サロメ」を歌って、文字通り(7つの?)ヴェールを脱いでいる。会場に足を運んだ方は、さぞや衝撃を受けたのでは。もちろん私もその一人。


今回の「マクベス」でもそうだが、彼女の素晴らしいところは、声の質は瑞々しくて繊細でありながら、会場を制圧させるほどの鮮烈的な鋭さを持っていること。
そう、力強さではなく、鋭さ。
また、声や歌い方にヘンな癖がなく、あたかもクリスタルグラスのような透明な輝きを有しているのも魅力的。

レパートリーが型にはまってないのも、いい。イタリア物だけでなく、ルサルカ、イェヌーファ、「スペードの女王」のリーサ、「オランダ人」のゼンタ・・・。
ちなみに、今ちょうどウィーンで新演出「トゥーランドット」を歌っている最中。12月中の一連のチクルス公演は、すべてソールドアウト。

まさに飛ぶ鳥を落とすような、もうネトレプコの女王の地位を奪ってしまいそうな破竹の勢いかもしれない。


そんな彼女は、既にチェック済の方も多いと思うが、来年5月に再び日本にやってくる。リサイタルだ。東響の「サロメ」を聴き逃した方だけでなく、今一番の旬の歌手を聴きたい方は、必見必聴。来年1月チケット発売。

と言いつつ、私は既に予定が入っていて、このリサイタルに駆けつけることが出来ない。
くそー。
ザルツ、行くかなー。行きてーなー・・・。