2023年12月7日 東京都交響楽団 東京文化会館
指揮 大野和士
ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)
レーガー ベックリンによる4つの音詩
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番
シューマン 交響曲第4番
「レーガー&ラフマニノフ生誕150年記念」と銘打たれた公演。
ラフマニノフがそうだということは知っていたが、レーガーもそうだったのか。同い年だったわけね。たまたまなだけで、おそらく本人同士は何の繋がりも無かったのだろうけど。
先月ベルリン・フィルの来日公演でレーガー作品が演奏されたのも、要するに記念年だから、ということだったのだろうか・・。
「ベックリンによる4つの音詩」は初めて聴いた。曲の名前さえも知らなかった。
(ていうか、レーガー作品で耳馴染んでいるのは、「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」くらい。)
音楽はとても聴きやすい。作曲家自身が「ベートーヴェンやブラームスといったロマン主義傾向を受け継いでいきたい」と語っていただけはある。
ならば、もっと作曲家としての人気、知名度が上がってもいいような気もするが、いまいちマイナーなのは、管弦楽曲よりも室内楽や器楽の作品の方が多いからだろう。「交響曲がない」というのは、後世に語り継がれる作曲家として、結構致命的なんじゃないかなと思う。
もう一人の1873年生まれのラフマニノフは、今年、多くのコンサートで演奏された。
そんな中で、協奏曲のソリストとしてルガンスキーを迎えたのは、良い人選だ。彼のラフマニノフ演奏は定評がある。
聴いた印象として、「ルガンスキー、手が大きいんだろうな」と思った。
と言っても、実際の手の大きさの話ではなくて、なんというか、ピアニズムに余裕があり、打鍵は強いけどいわゆる「ぶっ叩いている」感じではなく、技巧難度も感じさせずに、要するに作品を手玉にとっているのであった。好演。
ところで、このピアノ協奏曲第1番は、ラフマニノフの記念すべき作品番号1。若干19歳、まだ学生の頃に書いた作品だという。
それにしては、めっちゃ完成度が高く、超本格的な作品の仕上がりで、この日の演奏を聴きながら、「恐るべしラフマニノフ!」と驚嘆したのだが、コンサート終演後の帰路の途中、配布プログラムを読んだら、抜本的に改訂され、その完成はピアノ協奏曲第3番の後だったんだって。
あっそ・・。どうりで。
知らなかったわい。不勉強でした。
余談になるが、この日、ソリストと指揮者が登場し、「さあ、演奏」というところで、大野さん、オケと客席に向かって「すみません、ちょっと待って」という合図を送って、なんと、持ってくるのを忘れた指揮棒を取りに行くため、舞台袖に引っ込むという、ハプニング発生。
「指揮棒忘れるかっ!?(笑)」
戻ってきて、何事もなかったかのように涼しい感じで演奏を始めたけど、これって結構恥ずいよね。
メインのシューマン。これもまた良い演奏だった。
何を隠そう、この4番、実はあまり好きな曲じゃない。なんつうか、主題の旋律も和声もベタで、妙に田舎臭さ、ダサさを感じてしまう。だから、コンサートで積極的に聴きたいという衝動は湧かない。
今回、すごくイメージが良かったのは、それはもちろん指揮者大野さんの解釈とリードの賜物だろう。ロマン的な色感は失わずに、交響曲として、より端正な様式を構築してみせた手腕がさすがだった。