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2023/9/17 阪田知樹 ラフマニノフピアノ協奏曲全曲演奏会

2023年9月17日  阪田知樹 ラフマニノフ ピアノ協奏曲全曲演奏会   サントリーホール
指揮  大井剛史
管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団
ラフマニノフ  ピアノ協奏曲第1番、第2番、第4番、パガニーニの主題による狂詩曲、第3番


ラフマニノフ生誕150周年、没後80周年という記念年の壮大なるプロジェクト、ピアノ協奏曲全曲演奏会。特筆すべきは、誰かさんみたいに二日に分けて、ではなく(笑)、一公演で一気に全部やっちまうということだ。しかも、パガニーニ・ラプソディまでも加えて。

この無謀な(?)企画に挑戦したのが、若手の俊英、阪田知樹29才。いい度胸しとる。

本公演は午後4時45分に終わった。3時間15分の長丁場。休憩が2回入ったとはいえ、かなり大変なことだっただろう。

ここで言う大変というのは、単に肉体的技術的にキツいという意味だけではない。
「とりあえず、全部弾いてみました」では済ませられない。作品のすべてを読み込み、手中に収め、技術のひけらかしでなく、きちんとラフマニノフの音楽を披露しなければならない。
卒業試験用に作曲した習作のような第1番から、アメリカに亡命という人生の転機を経た第4番まで、作曲家自身に向き合い、一連の流れを通じて「ラフマニノフとは?」に迫り、演奏者としてその結論を提示しなければならない。

なんと、阪田知樹はきちんとこれらに踏み込んだ形跡を残したのである。

正直に言うと、私自身は「ラフマニノフを一挙に聴ける良い機会」という理由でチケットを買ったのであり、申し訳ないけどピアニストにそれほどの期待はしていなかった。こんなことを言っちゃ何だが、別に阪田さんでなくても良かったわけだ。

だが、すべてを聴き終えて、とても感心した。演奏が決して自己アピールに陥らず、一生懸命ラフマニノフの作風を見出そうとしていた。音楽的でありながら、その中にメッセージを込めている。これは、称賛に値する。


それにしても、会場を埋め尽くす女性ファンたちの数。久しぶりに女性トイレの長蛇の列を目撃した。短い休憩中に用を済ませることが出来たのだろうかと、要らぬ心配をしてしまった。
そして、すべての演奏が終わった瞬間にみんな一斉に立ち上がって、某国の将軍様を称えるかのような大拍手(笑)。

良い、良い。演奏家のファンになり、応援するところから始め、そこからクラシック音楽を身近に感じる。それでいいんだ。素敵なことじゃないか。

さらに今回、純粋に音楽、ラフマニノフを聴きに来た人間までも、しっかりと魅了した。
やるじゃんか、阪田くん。

でもさー、配布されたプログラムの中の本人ごあいさつで、「今日という日を私は一生忘れることはないでしょう」はいいとして、「指揮者の大井剛史様、東京フィルの皆様、会場の皆様にとっても、一生忘れることのない一日となったら嬉しい」って・・・いくら何でも、さすがにそれはちょっと・・・(笑)

ま、とにかくお疲れ様でした。