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2023/11/24 ベルリン・フィル2

2023年11月24日   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団   サントリーホール
指揮  キリル・ペトレンコ
モーツァルト  交響曲第29番
ベルク  オーケストラのための3つの小品
ブラームス  交響曲第4番

 

今回の来日公演、2つのプログラムの中に、レーガー、シュトラウスモーツァルト、ベルク、ブラームスの5つの作品が並べられたが、個人的に最も楽しみだったのが、ベルク。

期待どおり、いや高い期待を更に上回った凄演だった。

まさに「炸裂!」という表現が相応しい。ベルクという作曲家がウィーンに登場し、シェーンベルクとともに12音技法を駆使して既存の音楽の殻、既成概念をぶち破った、その衝撃を蘇らせるかのような火花散る演奏。
不協和音が咆哮するが、決して耳障りではない。
なぜなら、天才指揮者の解析によって、響きがクリアになり、作品の構成が明快に表示されているから。

それにしても、「3つの小品」というタイトルだが、どこが小品だっつうの。単に曲の長さが短いだけで、その規模はマーラーに匹敵するような大曲じゃんか。


メインのブラ4も、ブラームスのイメージを覆すような、強烈なインパクト。
いかにも北ドイツな哀愁、メランコリーは聞こえない。そこにあったのは、激しい燃焼力と力強い生命力。こんなにも充満したエネルギーが作品に内在していたのか、という驚きと発見。


指揮者のキリル・ペトレンコ
今回ベルリン・フィルの首席として日本初見参だったが、我々はついに「天下のベルリン・フィルが選んだ男」の本性と才能を目の当たりにした。

ベルリン・フィルが世界最高と言われるのは、一人ひとりの奏者が上手いから。彼らはオーケストラ・プレーヤーだが、個人として、とても優秀な音楽家たちだ。
その優秀な音楽家たちが、インタビュー記事などで、自分たちのボスをこぞって称賛している。その口ぶりから、お世辞、社交辞令などとはおよそ思えない。

ペトレンコに限らず、ベルリン・フィルに限らず、オーケストラ奏者に対して「理想の指揮者とは?」という質問をしたら、その答えはきっと、「自分たちの能力を最大限引き出し、最大限にまで高めてくれること」となると思うが、要するにペトレンコはそういう指揮者、それを可能にする指揮者なのだろう。私自身も2回の公演で、凝縮されたパワーを余す所なく解放させる、その卓越した手腕をはっきりと見出した。

リハーサルでは、まず演奏の最終地点をきちんと示し、そして、描こうとしている音の到達まで一切の妥協を許さないということを、とことん追求、徹底しているのだと思う。

オケを牽引するタクト、腕の動きも、まさに理想的。
レガートを要求する時、弧を描くようなしなやかでエレガントな腕さばきは、あのカルロス・クライバーを彷彿とさせる。偉大な天才指揮者がこの世を去り、そしてまた新たな天才指揮者がこの世に現れ、偉大となる階段を登っているのだ。

しかも、彼はまだ若い。

かくして、ベルリン・フィルの黄金期、絶頂期は、これからも続いていく。