クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2023/4/9 イースター・フェスティバル 影のない女

2023年4月9日  バーデン・バーデン祝祭劇場 イースター・フェスティバル
R・シュトラウス  影のない女
指揮  キリル・ペトレンコ
演出  リディア・シュタイアー
管弦楽  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
クレイ・ヒリー(皇帝)、エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー(皇后)、ミヒャエラ・シュスター(乳母)、ボグダン・バチウ(使者)、ヴォルフガング・コッホ(バラック)、エレナ・パンクラトヴァ 訂正:ミーナ・リーサ・ヴァレラ(バラックの妻)   他


ベルリンのフェストターゲでの「指環」とドレスデンの「シュトラウス・ターゲ」、これらを見つけたことで渡欧が決まった、ということについては、以前の記事に書いた。更にそこに決定的な後押し公演が加わった。

それがコレ。

私がすべてのオペラ作品の中で一番好きな「影のない女」。
それをペトレンコが振る。ピットにはベルリン・フィルが入る。
こんなすごいことが他にある??
これは「必見」などという言葉を越え、大袈裟だが、人生を賭けてでも何が何でも聴きにいかなければならない最大の公演だった。


まあとにかく・・・予想どおりというか、いや、予想を遥かに超えたというか・・・。

ベルリン・フィルの音が、も・の・す・ご・い!!!

もちろん、天才指揮者キリル・ペトレンコが築き上げ、完成させた音楽だ。

ピットの中から吹き出てくる、唸りを上げた狂瀾怒濤の演奏。ゴージャス、エレガント、豪華絢爛、究極の美・・・。

なんじゃこいつら? ベルリン・フィルは化け物か!? こんなすごい音、聴いたこと無い。
私の「クラシック、オペラの粋を極める!」は、ついにここにきて絶頂に到達した。

私だけではなく、他の聴衆も、驚き、どよめき、興奮し、そして熱狂した。怒涛のブラヴォー。大絶賛の嵐。こんなにも轟いたブラヴォーもまた、今まで聞いたことがない。

はるばるドイツに来て良かった。このベルリン・フィルの演奏は、私にとって長かったコロナ閉塞からの脱却宣言だ。


バラックの妻を歌った歌手について、当初に公表した記事で、エレナ・パンクラトヴァと記載した。ミーナ・リーサ・ヴァレラから急遽の代役ピンチヒッターであるとした。

開演直前、ステージに劇場支配人が登場し、ドイツ語だったので何を言っているのか聞き取れなかったが、「ミーナ・リーサ・ヴァレラ」「エレナ・パンクラトヴァ」という名前を耳にしたことで、早合点をしてしまった。

Hiro9様からの御指摘をいただき、代役ではなかったとのことで、謹んで訂正させていただきます。(Hiro9さん、ありがとうございます)

 

演出のシュタイアーは、2020年11月、新国立劇場で新作上演された藤倉大の「アルマゲドンの夢」(大野和士指揮)を演出した人物である。

舞台を修道院に設定し、その中で暮らす少女(黙役)の夢の中の出来事として物語は進行する。

出たよ、現代演出にありがちな安直手法、「夢や妄想の出来事」(笑)。

ただ、単なる妄想ではなく、もうちょっと奥が深くて、この物語に潜むテーマ「子が出来ない」から思考を発展させ、代理出産や里親といった社会問題にまで踏み込もうとしている。その点については、演出家の積極的な解釈と問題提起を是としたい。
最大の問題は、第三幕で壮大な音楽的クライマックスが構築されようとしている時、黙役の少女がまったく意味不明の「土掘り作業」を舞台上で延々と行って、これが目障り極まりなく、音楽の邪魔をしたこと。唖然としたし、許せない。

第二幕までは「なかなかいいじゃんか」と思って観ていたが、この最後の愚行によって、演出家リディア・シュタイアーに対する私の評価はどん底の地に堕ちた。音楽の力を信用できない演出家、そこでどんな音楽が展開されているかを理解できない演出家は、オペラを演出する資格なし。


ところで、バーデン・バーデン・イースターフェスティバルのレジデント・オーケストラとなっているベルリン・フィル
以前は、この時期、カラヤンが創設したザルツブルクイースター音楽祭に毎年出演していたが、ここバーデン・バーデンに移った。おそらく獲得を巡る争奪戦には、札束が飛び交ったものと推察される。

目玉を横取りされたザルツブルク
その後、代わりのレジデント・オーケストラとして、ティーレマンのシュターツカペレ・ドレスデンを招聘。その契約が切れると、2023年からは決まったレジデント・オーケストラを置かず、毎年違ったオーケストラを招くと発表。今年はネルソンス指揮ゲヴァントハウス管が、来年はパッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア管が務めることとなった。

更に更に、これに続くビッグ・ニュースが発表されて、なんと、2026年からは再びベルリン・フィルがザルツに戻ってくるとのこと。

ということは・・・さてさてバーデン・バーデン、どうするの?