クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

イスラエル・フィル 来日中止

今月に予定されていたイスラエル・フィルの来日公演が中止になった。主催者が正式に発表した。

今回の公演では、ピアノの小林愛実、ヴァイオリンの庄司紗矢香といった実力と人気を兼ね備えた日本人奏者がソリストに迎えられていたので、楽しみにしていたファンも多かったことだろう。その意味では、残念。

だが、冷静に考えれば、やむを得ないことであり、至極当然の結果と言える。この状況下で、演奏旅行を行えるはずがない。主催者として、オーケストラ側として、妥当な判断だ。

中東における紛争とは一定の距離がある日本でのコンサートだ。そんな公演で、一体どれほどの支障やリスクがあるのか、という意見が、もしかしたらあるかもしれない。

だが、「イスラエル」という名札を付けた団体が、皆で一斉にイスラエルから出国し、移動し、時と場所を明示して、それに向けて行動するわけである。もうそれだけで、現状では「超ハイリスク」と言わざるを得ない。テロのターゲットとして、あまりにも目立つ存在だからだ。
それは、たとえ比較的平和な日本であっても変わらないし、前段階の日本への移動中に狙われる可能性だって高い。

受け容れる側においても、保安警備上のレベルを数段上げないといけないだろうし、そのための諸費用もかさむだろうし、万が一の事態が発生した場合、誰がどのように責任を取るべきなのか、という頭を抱えるような問題が突き付けられるのである。


イスラエルパレスチナの問題は、あまりにも根が深い。
今回の紛争の発端自体は、ハマスからの先制攻撃によるものだから、それだけを見れば「悪いのはハマス」という図式になる。
しかし、歴史における対立構造を見渡した場合、「ユダヤ人がパレスチナの土地に侵略し、イスラエルという国を作って、戦争を仕掛けた」というれっきとした経緯があり、その事実をどう捉えるべきなのか、これを無視していいのか、という問題が常につきまとう。

単純ではないのだ。本当にややこしく、一筋縄でいかず、難しい問題なのだ。


日本のクラシック史における金字塔となった歴史的な名演、1985年9月のイスラエル・フィル来日公演。レナード・バーンスタイン指揮のマーラー交響曲第9番の演奏会。
当時大学生だった私は、チケットを必死になって取り、NHKホールに駆けつけ、この超が付く名演に接することが出来た。

そして、今でも覚えている、この日のNHKホール入り口に近い代々木公園の付近にて。
数台の街宣車が停車し、某政治団体がスピーカーを使って、イスラエルパレスチナ侵略に抗議し、イスラエル・フィルの日本公演に関し妨害の意思を持って抗議するシュプレヒコールを行っていた。

当時から、イスラエル・フィルの来日公演は、紛争に関わる政治的マターだったのだ。