クラシック、オペラの粋を極める!

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2023/10/17 A・カントロフ ピアノ・リサイタル

2023年10月17日  アレクサンドル・カントロフ ピアノ・リサイタル   東京オペラシティコンサートホール
ブラームス  ピアノ・ソナタ第1番
バッハ(ブラームス編)  シャコンヌ
シューベルト/リスト  さすらい人、水車小屋と小川、春への想い、街、海辺で
シューベルト  幻想曲ハ長調 さすらい人


「天才」と評され、世界が注目するフランス人ピアニスト。チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、デビューしたばかりの頃は、まだ「ジャン・ジャック・カントロフの子息」という目で見られていたが、今やもう誰もそのように呼ばない。「カントロフ」と言えばアレクサンドル、ヴァイオリニストではなくピアニストのことを指す。

2019年チャイコフスキー国際コンクールの覇者・・・この時の第2位が、日本が誇る若き俊英、藤田真央だ。
藤田の才能は誰もが認めていて、既に活躍の場を世界に広げ、檜舞台を駆け巡っているが、コンクールでその上に立ったのが、カントロフ。上には上がいたというわけだ。


本人によると、本プログラムはおよそ1年をかけたツアーを通じてじっくりと取り組み、満を持して披露しているとのことで、その言葉のとおり、完璧に仕上がった極上の芸術品であった。
全曲を通して計算し尽くされ、どの曲も抜け目がないが、個人的には前半のブラームスとバッハに特に感銘を受けた。
ブラームスにおける力強い打鍵から繰り出させる音楽の輝き、透徹の眼差し。
そして、左手のみで奏でられたバッハの深淵の世界、濃密な響き。
圧巻の一言だった。


それにしても、ピアノ界の未来は明るい。
ずっと、長い間、ポリーニアルゲリッチツィメルマン、シフといったベテラン勢が幅を利かせていたが、どうやら着実に世代交代が進んでいるようだ。
カントロフや藤田真央に加え、D・トリフォノフ、I・レヴィット、チョ・ソンジン、ラン・ランといった面々が世界を席巻中。特に近年、アジア勢の躍進が目立つ。才能は、これからも世界の津々浦々から出現してくることだろう。