クラシック、オペラの粋を極める!

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2023/10/14 日本フィル

本当はこの日、日本フィルを聴いてからただちに渋谷に移動するダブルヘッダーのはずだった。
ブロム御大の来日キャンセルは、残念。とはいえ、96歳という年齢を考えれば多くを望むことは出来ない。
本人はN響に「来年10月の来日を楽しみにしている」とのコメントを寄せたとのこと。そんな先の事は神のみぞ知るだろうが、我々としては回復を祈り、幸運なチャンスを静かに待ちたいと思う。

 

2023年10月14日  日本フィルハーモニー交響楽団   サントリーホール
指揮  カーチュン・ウォン
合唱  harmonia ensemble東京少年少女合唱隊
山下牧子(メゾ・ソプラノ)
マーラー  交響曲第3番


本公演はカーチュン・ウォンの日本フィル首席指揮者就任披露演奏会。この記念すべき公演に、これでもかとばかり、いきなり最大の勝負曲を持ってきた。カーチュンがマーラー国際指揮者コンクールで優勝し、一躍その名を轟かせるきっかけとなった交響曲、第3番である。挨拶代わりの一発として、これ以上はない。

その並々ならぬ自信の程は、暗譜から繰り出すタクトの強靭さ、雄大さ、きめ細やかさに表れている。スコアの読解は完璧と言っていい。そして、奏者から音を引き出し、そこに輝かしい生命力を吹き込む操縦術、推進力、爆発力、いずれも桁外れであった。

耳で音の振動を捉え、心で音楽を感じながら、目では・・・実際にはオーケストラという楽器群がステージ上に居並び、視界に写っているのに、イメージとして、パート別に何段にも重ねられた巨大な層のスコアが浮かび上がって見えるという不思議な体験・・・。

日本フィルの奏者たちも、意欲満々。全身全霊でタクトに食らいつきながら、献身的にマーラーの崇高な音楽を生み出している。

普通、オケ奏者というのは、合奏の中における自分の演奏、自分の楽器の音を注意深く聴いているはずである。
だが・・もちろんこの日の演奏にしても実際にはそうしているのだろうが、私には、全員が揃ってただひたすらマーラーの世界に没頭しているように見えた。

そして、奏者と同様、全身全霊でマーラーに耳を傾けている「聴衆」という存在が、そこに加わる。

演奏会において、かのごとく三位一体化した時、名演は生まれる。これは、必然の成り行きである。