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2023/9/18 新国立 オペラトーク

2023年9月18日  新国立劇場 オペラトーク
プッチーニ「修道女アンジェリカ」、ラヴェル「子どもと魔法」
出演:沼尻竜典(指揮)、粟國淳(演出)、井内美香(司会)
歌唱:修道女アンジェリカより  中村真紀(アンジェリカ)
子どもと魔法より  金澤桃子(子ども)、三宅理恵(火/お姫様/うぐいす)、河野鉄平(雄猫)、藤井麻美(牝猫)
木下志寿子(ピアノ)

 

新国立劇場の新シーズン開幕を飾るニュー・プロダクション、「修道女アンジェリカ」「子どもと魔法」ダブルビルの公演初日が目前に迫る中、指揮者と演出家を招き、数人の出演歌手(アンダーを含む)も参加したオペラトークが開催されたので、行ってみた。会場は新国立劇場のホワイエ。

ヨーロッパの劇場、特にドイツなどでは、公演当日、開演時間の45分くらい前から、演目の紹介や見どころなどを解説する講演、トークショーをよくやっている。劇場の担当者や公演関係者が話をするのが大概のパターンで、基本無料、毎回多くのお客さんが詰めかけている。お客さんの中には、普通にお芝居を観に来る感覚で、音楽やストーリーもよく知らずにやってくる人も結構多いので、そういう人たちにとっては、ありがたいイベントになっているはず。

新国立だと、毎演目必ずではないが、特に新演出を出す場合などにやっているようだ。指揮者、演出家を招き、彼らから作品やプロダクションについてのお話が直接聞けるというのが特徴。事前のチケット購入が必要だが、とても良い取組みだと思う。

ということで、今回、公演を担当する指揮者:沼尻竜典さん、演出家:粟國淳さんがマイクを持ってひな壇に並んだ。司会は音楽ライターの井内美香さん。


私の場合、新作やレア作品などのごく一部を除き、ほとんど全ての演目は十分に聴き馴染んでいるので、別に今さら物語の紹介をしてもらう必要は全然無いのだが、それでも指揮者や演出家から直接話を聞けるというのなら、興味があるので聞いてみたい。
指揮者なら、作品の構成や特徴、音楽作りのポイントなど。演出家なら、この物語から何を読み取り、どのように表現したいのか、など。
あるいは、舞台を作っていく過程での苦心事項やエピソードなども、あれば教えてほしい。

そんな期待をしながら、彼らの話に耳を傾けたのだが・・・。

まあその、何だな・・・確かにそれなりに色々語ってくれて、なるほどと思える話もあったが・・・。

やっぱりどうしても「皆さんに分かりやすく、丁寧に」という内容になってしまうので、専門的な話は避けられてしまうのだ。で、核心的なことは、「まあ、そこらへんは観てのお楽しみ」で逃げられてしまうわけだ。
特に、沼尻さんなんか、もっと本格的な話が出来るはずなのに、「どうせ、難しい話をしたって分からないだろうし・・」みたいな魂胆が見え見え。

それに、指揮者も演出家も人間でさ、人を前にして話をすると、ついサービス精神が出て饒舌に語るんだけど、あれこれペラペラ喋れば喋るほど、話のポイント、結論が薄ぼける。
また、面白いことを言って笑わせたりしてくれるんだけど、もちろんそれでウケてくれるお客さんもたくさんいるけど、オレなんか「いいよ、そんな話、どうでも・・」みたいに思ってしまうわけ。

結局、話を総合的に聞いた結果、「今回の上演の意義はこうだ!」とか「新機軸を打ち出し、世に問う!」みたいな内容も意気込みも全然感じられなかった。

まあそうなんだよな。所詮はオペラトークなんだし、それを期待してもしようがないんだな。


そんな指揮者、演出家のありきたりの話よりも、遥かに突き刺さったのは、音楽紹介として登場した歌手たちの歌唱の素晴らしさであった。
広い舞台から離れた客席ではなく、至近距離5メートルで聴くオペラ歌手の歌声のド迫力!
ビリビリと痺れる。しかも、迫真の演技、表情付き。
圧倒され、思わず仰け反る。ウッひぇー! すげえ・・。

ソプラノの中村真紀さんが、アンジェリカの感動的なアリアを歌ってくれた後だった。司会の井内さんが「心を揺さぶられるようなアリアを歌っている時、歌手の方々って、どうやって心をコントロールしているんですか?」って聞いてくれて、「そこです、そこが本当に難しいんです。自分だけでなく、みんなが難しいと思います。」と答えてくれた一つの質疑応答。これこそが、この日一番の「うんうん、そうだよね~」と共感した、ナイスなやりとりだった。


最後に、新国立劇場の宣伝の一端を担ぐつもりは全然無いが、それでも多くの方に「修道女アンジェリカ」を聴いてほしい。知ってほしい。
大好きなオペラ。片手五本に入るいとしの作品。音楽がとにかく感動的で、泣ける。プッチーニは、ボエーム、トスカ、蝶々夫人だけじゃないのだよと、私は声を大にして言いたい。(「西部の娘」もいい曲でっせ)