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2023/5/2 掛谷勇三 ピアノ・リサイタル

2023年5月2日   掛谷勇三 ピアノ・リサイタル   東京文化会館小ホール
ラフマニノフ 生誕150周年記念 ピアノ独奏作品全曲演奏会 Vol.2》
ラフマニノフ  幻想小品集、24の前奏曲


最初に。
主催者による本公演のタイトルは、「ラフマニノフ 生誕150周年記念 ピアノ独奏作品全曲演奏会 Vol.2」である。配布されたプログラムでも、まずそのように大きく表記があって、演奏者である掛谷勇三さんの名前は下の方に小さく記されているのみ。
これは、明らかに「企画された催し物こそがメイン」で、「演奏者はその催し物の一出演者にすぎない」ことを表している。

まあ、主催者が「そうだ」と言うのだから、あえて否定はしない。

でも、たとえ主催者の企画立案がそうであったとしても、実際のコンサートというのは、演奏者がそのプログラムや作品を演奏して音楽を届け、聴衆にメッセージを伝える場であると、少なくとも私は信じたい。
だから、あくまでも私にとっては、本公演は「掛谷勇三 ピアノ・リサイタル」だ。そういうことで、このブログではそのようにタイトル表記させていただく。


ただし、企画そのものは素晴らしい。
今年はラフマニノフの記念イヤーということで、この作曲家の作品を演奏するコンサートが多いが、やはりコンチェルトが目立つ。中には、全4曲の制覇演奏という公演も見かける。
でも、「どうせならソロ作品を全部やるという企画があってもいいよな」なんて思っていたら、あった。本公演を見つけられたのだ。


ピアニスト、掛谷勇三。
略歴を拝見したら、全曲演奏プロジェクト、2003年から04年にかけて既にやっていたとのこと。今回、記念イヤーで、再度改めてというチャレンジだ。

実は、掛谷さん、随分と昔、彼の演奏を一度だけ聴いている。
1988年。彼は東京藝術大学を首席で卒業し、東京文化会館で、その首席卒業者紹介演奏会なる公演に出演した。私はそのコンサートに足を運んだ。
(指揮:佐藤功太郎、管弦楽東京藝術大学管弦楽団

なんでそんなコンサートに行ったかというと、私の友人が同大の作曲学科卒で、この演奏会で彼の作品も演奏されるということで、いわば友人として応援で駆けつけたのであった。
出演したのは、作曲部門の私の友人を除くと、ソリストとして他に3人。ピアニスト、ヴァイオリニスト、ソプラノというメンバー。
で、この時のピアニストが掛谷さんだったわけ。

ちなみに、この時のヴァイオリニストは、現在ベルリン・フィルに在籍している町田琴和さんである。

掛谷さん、このコンサートで披露したのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番。
なんと、ラフマニノフ
ということは、掛谷さんにとって、学生時代から思い入れのあった作曲家だったのだろうな。


さて、この日の感想であるが、「十分に研究し、いっぱい練習して、出来上がった物を披露したな」というものであった。
あくまでも個人的にそう思っただけ、私自身そのように捉えただけだが、このピアニストはパッションや閃きによって演奏する人ではないだろう、と。

で、私がこれまで、特に外国人ピアニストによるラフマニノフを聴いてきて(CD等の録音を含む)、パッションや閃きを上乗せする演奏というのが多かった気がする。もちろん「それだけ」とは言わんが。
ラフマニノフの場合、高度なテクニックに加え、こうした演奏上の要素もきっと必要で、私はそういう演奏に耳慣れていた。

なので、掛谷さんの演奏は、あくまでも彼のやり方、一つのアプローチとして、「なるほど、こういうラフマニノフもあるんだな」と思い知った。決して良い悪いの問題ではない。